updated 06/03/13
KanPara Press 〜感じるパラリンピック〜カンパラ
“超人列伝コラム”
〜トリノパラリンピック〜
(2006年3月11日〜19日)
小林 深雪
遠藤 隆行
シエーン フェルダー
カーリングイギリスチーム
新田 佳浩
東海 将彦
ブライアン マッキーバー
ビョンスタ ヘルゲ
鈴木 猛史
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パラリンピック超人列伝
文:隈元大吾 写真:越智貴雄
シェーンフェルダーの力強い滑り=2006年WC長野志賀高原大会で(2006年2月1日撮影)

 彼のパフォーマンスをして、「強い滑り」としばしば形容される。選ぶラインは直線的で、ときに旗門をなぎ倒す。逞しい体躯から繰り出されるスキーは、さながら重戦車のようで、それでいて速い。オーストリアのアルペンスキーヤー、ヘルマン・マイヤーを思わせる。 「たしかに私は強く滑るタイプですね。思えば幼い頃からそうだった。ひとたび斜面を駆け下りれば、勝つかコースアウトするかのどちらか。ストレートなラインを狙っていくのがモットーです。そして何より大事なのは楽しむこと」

 ゲルト・シェーンフェルダーがスキーを始めたのは3歳の頃にさかのぼる。「子どもの頃からスポーツが好きでした」バイエルンに暮らしていた彼は当時からスキーに真剣に取り組み、州の大会に出場しては表彰状やトロフィーを勝ち取った。またサッカーをはじめ、スポーツと名の付くものには何でも食いついたという。

 快活な10代を謳歌していた彼に悲劇が訪れるのは、19歳のときだ。1989年9月のある日、いつものように仕事を終え帰宅を急ぐシェーンフェルダーは、走り出した電車の扉を開けようと手を掛け、そのまま線路に巻き込まれてしまう。その事故で、右腕と左手の指を失ったのだった。

 「スポーツが自分を救ってくれた」と、彼はいう。
「からだに障害を負ってから最初にやったのはサッカーでした。始めは周囲が私に気を遣っているのがわかった。でも腕がなくてもサッカーはきちんとできる。そのうち一緒にプレーする仲間たちが健常者と同じように私と接してくれました。蹴られたり倒されたりもしたけど、それがうれしかったし、自分を日常に戻してくれる最高の薬でした。そして、そういった周囲の友だちや家族の支えがあったからこそ、いまの私がある」

 二十歳になり知人の誘いでスキーのチームに入ると、シェーンフェルダーは幼少の頃から培ったセンスと恵まれた体躯を武器に、頭角を現していく。1992年のアルベールビル大会でパラリンピック初出場を果たし、以降、ソルトレークシティ大会では滑降、スーパー大回転、大回転、回転と、4種目制覇を成し遂げた。

 だがメダルコレクターとなっても、シェーンフェルダーのスキーに対する情熱が燃え尽きることはない。
「ソルトレークシティ大会を終えてから、日々行なう電気関係の仕事を半日に減らし、よりスキーに集中できる環境をつくりました。トレーニングは週6日、1日3〜4時間ほど。道具も変え、さらに記録が伸びた。昨年の夏にはドイツの健常者のアルペンチームとともにトレーニングもした。そのようなさまざまな新しい経験によって、スキーがもっと楽しくなったんです」

 四冠を獲得したソルトレークシティ大会から4年、35歳になるシェーンフェルダーは、さらなる進化を遂げてトリノに臨んでいる。11日の男子滑降立位では持ち前の力強い滑りで金メダルを獲得、また13日の男子スーパー大回転立位でも銀メダルを手にしている。

 「コンディションはとてもいい」5度目の大舞台に、白い歯がこぼれる。
「雪もパーフェクトだし、観客も多い。セストリエールをとても楽しんでいます。つぎに行なわれる大回転は私の得意種目。最高のメダルを獲れるチャンスだと思う」

 スーパー大回転を滑り終えた直後、彼は左腕を高々と上げた。その先にはドイツから駆けつけた両親と友人が声援を送っていた。
「ここまでこれたのは彼らのおかげ。支えてくれる人たちすべてに感謝したい。こんなにスキーで成功できて、私はむしろ怪我してよかったのかもしれないね」

 力強い滑りを支える数多の優しさ。残る大回転と回転を終えるまで、シェーンフェルダーの躍動は止まらない。

13日、スタート直後、力強く飛び出すシェーンフェルダー=セストリエール
Profile
ゲルト・シェーンフェルダー
(Gerd Schoenfelder)
アルペン立位(LW5/7-2)
1970年9月2日ドイツ生まれ。1989年9月、列車事故により右腕と左手の指を失う。事故の翌年3月にスキーを再開し、1992年のアルベールビル大会から今トリノ大会でパラリンピック5大会連続出場となる。
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