updated 06/03/18
KanPara Press 〜感じるパラリンピック〜カンパラ
“超人列伝コラム”
〜トリノパラリンピック〜
(2006年3月11日〜19日)
小林 深雪
遠藤 隆行
シエーン フェルダー
カーリングイギリスチーム
新田 佳浩
東海 将彦
ブライアン マッキーバー
ビョンスタ ヘルゲ
鈴木 猛史
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パラリンピック超人列伝

文:荒木美晴
写真(上):九十九千晶
写真(下):越智貴雄
11日、試合後に氷上で彼女にプロポースするビョンスタ=エスポジツィオニ

 「あぁ、とても悲しい。金メダルを取れなかった。でもハッピーだよ。ファイナルまで戦ったからね」

 ノルウェーチームのベテランフォワード、ビョンスタ・ヘルゲは、シャワーを浴びたせいか、少し紅潮した顔でこう話した。競技8日目、アイススレッジホッケーは、カナダが頂点に立ち、幕を閉じた。2大会ぶりの優勝を目指したノルウェーは、残念ながらリベンジを果たせなかった。だが、攻撃・守備・スピードといずれも高いパフォーマンスを見せ、大会を最後まで盛り上げた。

 技巧者が揃うノルウェーチームにおいて、彼の集中力と、パックをコントロールする能力は抜群の安定感がある。それも週に3回の氷の上での練習と、車椅子に乗りスティックで移動するロードトレーニングといったハードな練習の賜物だ。前回のソルトレーク大会では、世界のベストフォワードに選ばれた。そして今大会は、アシスト数でトップタイになった。ベストフォワードは狙ってなかったのかとの問いに、「NO」と答える。
「得点を決めるのも気持ちがいいけど、アシストするのが今の僕の仕事。ノルウェーにはいい選手が揃っているし、若いのも育っているからね」と、34歳のベテランは自分の役割に自信を持つ。

 ビョンスタにとって、トリノは実に夏冬合わせて7回目のパラリンピックだ。もともと水泳の選手で、14歳の時に水泳のナショナルチームに選ばれた。ソウルパラリンピックの初出場を皮切りに、バルセロナ、アトランタ大会にも連続出場。金メダル4個、銀メダル2個を獲得している。生まれつき左足に障害があり、1歳半のときに大腿部から下を切断。その後、5歳で水泳を始めた。学校では友人と自転車に乗り、活発に遊びまわる子どもだった。
「足を切っていなかったら、座ることも遊ぶこともできなかった。母の決断のおかげで、水泳を習い自由に動くことが出来る。家族が背中を押してくれた」

 アイススレッジホッケーと出会ったのは、91年のことだ。祖母が亡くなり落ち込む彼に、当時の水泳のトレーナーが紹介した。水泳と平行して行える氷の格闘技に興味を持ち、仕事と水泳、スレッジホッケーのトレーニングの3つを両立した。そして94年リレハンメルパラリンピックのノルウェー代表となり、銀メダルを手にした。また、96年に最愛の母を亡くした後はスレッジホッケーだけに集中し、続く長野でも金、ソルトレークでも銀を獲得した。その後、右足を痛めていったんは競技生活を中断するが、昨年の夏に復帰。そして今回、ここトリノで銀色のメダルをコレクションに加えた。スレッジホッケーだけでも4度目のファイナル。長い期間、トップアスリートで居られる理由を聞くと、彼はこう答えた。
「勝つことに焦点を定め、メダルのために死ぬ気で戦う。スポーツは、僕の人生のすべてだから」。強さの原点は、ここにあった。

 今大会の1次リーグのイタリア戦のあと、ビョンスタは大胆な行動に出た。超満員の観客とリンクで整列する両チームの選手を前に、ひとりリンクの中央に進み出た。スコアボードには「Catherine,will you marry me?」の文字。そう、観戦に来ていたガールフレンドに向かって、なんとプロポーズしたのだ!スタンドから降りてきたガールフレンドとの熱い抱擁とキスを見届けて、会場内のすべての人が大きな拍手を送った。
「大会が始まる前、緊張して練習に集中できなかった。だから初戦の後にプロポーズすることに決めていたんだ」。
 7度目の大舞台は銀メダルで幕を閉じたが、ビョンスタは人生の金メダルを手に入れた。

18日、決勝戦で必死にパックへくらいつくビョンスタ・ヘルゲ=エスポジツィオニ
Profile
ビョンスタ・ヘルゲ
(Bjornstad Helge)
アイススレッジホッケー
1971年10月14日生まれ。ノルウェーのオスロ出身。今大会で夏冬合わせて7度目のパラリンピック出場。スレッジホッケー代表としては4度目の出場で、ベテランのフォワードとしてチームを銀メダルへと導いた。トリノ大会ではアシストリーダーに選ばれる。
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