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より高いパフォーマンス実現のために(前編) 近年、競技レベルが格段に向上しているパラリンピック。欧米ではプロ的な環境で競技に専念する選手も多く、社会全体で強化体制をとる国も増えている。好成績を残すには、競技に専念できる経済的後ろ盾が不可欠だ。 日本選手はというと、仕事や障害者年金などを収入源に、そこから練習費や海外遠征費などを捻出する、「自己負担型」がいまだに大半である。経済的な理由で、競技生活を断念せざるを得ない選手がいるとも聞くが、昨今の障がい者スポーツへの注目やパラリンピックでの選手の活躍などもあり、少しずつ変化のきざしも見られるようだ。
車椅子レースの日本の第一人者としてパラリンピックでも好成績を収めている陸上競技の土田和歌子選手は、いち早くプロ活動を始めたひとりだ。現在はセイコ・ハシモトインターナショナルコーポレーション(SHI)にマネージメントを一任し、スポンサー9社と契約を結んで競技に専念できる体制を敷いている。 きっかけは、アイススレッジレースから陸上に転向して参加した2000年のシドニー夏季パラリンピック。1500mと5000mでそれぞれ6位、4位に入り、マラソンでは銅メダルを獲得したものの、さらに上をめざすには、「今のままでは無理。練習環境を変えなくては」と痛感。そんな矢先に、縁あって現参議院議員の橋本聖子氏に声をかけられ、東京都職員という仕事を辞め、競技専念の生活を決意。2001年のことだ。 プロとなった今は、スポンサーからさまざまな支援を受けている。練習費や遠征費といった金銭的なものから、競技用具といった物品での支援もある。たとえば土田選手の場合は、1台50〜60万円という競技用車椅子のほか、生活必需品である乗用車も提供されている。 「走るために仕事をしていた状況から、『走ることが仕事』になった。経済面の心配なく、好きなことを思い切りやれる環境が整ったのはとてもありがたい」と土田選手は話す。スポンサーがついたことはまた、「独りきりでなく、周囲に支えられ一緒に戦っているという意識と責任感が練習への意欲にもつながり、いい意味で競技力向上に役立っている」ともいう。 実際、2004年のアテネ夏季パラリンピックでは、5000mでパラリンピック新記録で金メダル、マラソンでは銀メダルを獲得。シドニー大会を上回る成績を残している。 しかし、経済的支援さえあれば選手としての成功が約束されるわけではない。競技に専念することへのプレッシャーに打ち勝ち、自分を律する強い意志が欠かせない。 「(プロ活動できる)今の状況はありがたいが、練習環境がパーフェクトに整うことでハングリー精神が薄らぐ危険性を感じる部分もある。競技者としてのモチベーションを高くもち、自分のベストを尽くす姿勢はプロだろうとアマだろうと変わらない。そういう基本的な意識は持ち続けねばならない」と土田選手は強調する。 また、近年の経済停滞による企業スポーツの縮小といった逆風の中、スポンサー探しも容易ではない。土田選手をマネージメントするSHIの小俣正樹代表取締役によれば、幅広い企業へのアプローチが必要であり、一見スポーツとの関連性が薄いと思われるジャンルの企業にも足を運ぶ地道な活動が欠かせない。さらに重要なのは、選手の実績と価値のアピール。選手自身のモチベーションの高さと目標を提示し、賛同されることが契約にこぎつける最大のポイントだという。 土田選手は現在、妊娠中だが、9月の出産予定後には08年北京パラリンピックに向け、再始動する予定だという。練習の中断を余儀なくされる妊娠は競技者としてはリスキーであり、スポンサーを失うことも覚悟したというが、幸い、全社が契約を継続してくれた。「妊娠も出産も初めてのことなので、復帰後のパフォーマンスは未知数。でも、期待を励みに全力を尽くしたい」と決意はゆるぎない。 生活の心配なく、競技活動に専念できる「プロ」は、スポーツ選手としては「理想形」に近い。しかしその立場を選手としての成功に生かすには、本人自身の強い意志と行動力がより強く求められる「厳しい形」でもあるのだ 【文・星野恭子】⇒ パラコラムトップページへ ⇒ カンパラトップページへ |
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