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アルペン日本チームの主力はピョンチャンで活躍できるのか! ~IPCワールドカップ白馬大会で見えてきたピョンチャンへの希望~

スーパー大回転2戦目女子座位で優勝した村岡(撮影:堀切功)

スーパー大回転2戦目女子座位で優勝した村岡(撮影:堀切功)

 3月5~6日、長野県白馬村で開催された「2017 IPC アルペンスキーワールドカップ白馬大会」。各国のトップレベルの選手がシーズンを通して世界を転戦する、このシリーズレースが日本にやって来たのは、2008年以来8年ぶりとなる。今回行なわれた大回転1戦とスーパー大回転2戦を通して確認できたこと。それは、日本の主力選手が、世界の第一線で戦える実力を充分に維持しているという、2018年ピョンチャン・パラリンピックに向けての希望だった。
 今季のここまでを振り返ると、ワールドカップと世界選手権を通して、他国の強力なライバルと新鋭の台頭に日本選手は少々押されぎみのように感じられた。白馬大会初日の大回転でも、女子座位で村岡桃佳(早稲田大学)が3位に入ったものの1位とのタイム差は大きく、そして男子は一人も3位以内に到達できずに海外勢の後塵を拝す結果となった。
 だが、そんな今ひとつすっきりとしない空気は、大会2日目に払拭された。天候悪化が懸念される翌日の予定を繰り上げ、スーパー大回転を一日のうちに2レース実施する特別措置がとられたこの日、2戦目の女子座位で村岡、同じく男子座位で森井大輝(トヨタ自動車)がそれぞれ優勝。日本選手全体としても2戦合わせて5名が表彰台に上り、自国開催の取材に訪れた多くのメディアの期待に応えてみせた。

スーパー大回転2戦目男子座位表彰式で笑顔の森井(中央)(撮影:堀切功)

スーパー大回転2戦目男子座位表彰式で笑顔の森井(中央)(撮影:堀切功)

悲願の金メダル獲得へ、戦略と技術に磨きをかける森井大輝

 ワールドカップ総合優勝のクリスタルトロフィーを2度獲得し、世界中の選手からリスペクトを受けている森井大輝。しかし、パラリンピックの金メダルだけは手に入れていない。2010年バンクーバー大会では、本命視されながら天候と雪質の悪化に苦戦。2014年ソチ大会も同様で、最初の種目の滑降で派手に転倒し、スーパー大回転の銀メダル一つに終わっている。両大会に共通していたのは、シーズン終盤特有の軟らかい雪質。スキーのエッジを鋭く効かせた、1本の細いシュプールがきれいに残るようなターンを得意とする森井にとっては、氷に近いような硬い雪こそが望むべき条件なのだが、近年のパラリンピックはそれにはほど遠い雪質ばかりだった。そして2018年ピョンチャン大会も、雪が緩む恐れが多分にある。悲願の金メダルを獲得するためには、軟らかい雪への対応が必須だ。
 その意味でも、今回の白馬での勝利は大きい。気温が上昇して軟らかくなった雪と、共通のセッティングで2戦を行なったために荒れたコースにライバルたちが次々に散る中、攻めるべきポイントをねらいすました森井の戦略と技術の高さには目を引くものがあった。正直なところ今季は、リスキーな滑りを躊躇なく展開する海外のトップ選手や、成長目覚ましい若手に比べて、少々おとなしくまとまった印象があったが、この滑りができるのなら大丈夫。5大会目の挑戦となるピョンチャン・パラリンピックで、森井が金メダルを獲得する確率は、過去最高に高まっているように思う。

女王打倒をねらう村岡桃佳の成長

 村岡桃佳の勝利も、日本チームにとって明るいニュースだ。女子座位では、ソチ大会5冠のアナ・シャッフェルフーバー(ドイツ)が圧倒的な強さを発揮し、その牙城を容易には崩せない状況が続いている。今回、彼女を抑えての優勝を初めて経験したことは、村岡にとって重要な一歩となったはず。実際、その滑りも着実に進化を遂げている。もともと持っていたキレの良いターンを、より旗門に近いラインでつなげられるようになった点、そして課題のひとつだった左右のターンの差が小さくなっている点に、昨季からの成長を見ることができた。ソチ大会でパラリンピック特有の雰囲気を肌で知り、2度目の大舞台に挑む村岡。この右肩上がりの勢いを緩めさえしなければ、ピョンチャンでは女王アナを追い落とす一番手にきっとなれる。

狩野亮と鈴木猛史、2人の金メダリストの存在感

 今回の白馬大会では、狩野亮(マルハン)と鈴木猛史(KYB)という2人の金メダリストの健在ぶりも確認できた。狩野は、4年間かけて用具や技術の課題をひとつずつクリアしていくタイプで、中間年の成績からは真の実力を判断しにくい選手。得意とする高速系種目でときおり表彰台にからんでくるようであれば、心配は無用だろう。彼の最大の武器は、4年に一度、パラリンピックに照準を合わせて自身の状態をピークに引き上げる能力にある。それでも3大会連続して金メダルを獲得するのは並大抵のことではなく、運をも味方に引き寄せる必要さえあるに違いない。白馬での3位は、現在の狩野にその偉業に挑む資格が充分にあることを証明したといえる。
 一方、鈴木の3位は、決して得意とはしていない高速系種目での表彰台ということが、重要な意味を持つ。彼がもっとも実力を発揮するのは、ソチ大会で金メダルを獲得し、今季のワールドカップでも1勝を挙げている回転。ピョンチャンでもメダルへの大きな期待が寄せられる種目となるが、スーパー大回転の調子が上がれば、両種目を組み合わせたスーパーコンビでも俄然優位になってくる。

男子立位でメダルに挑む三澤拓

 スーパーコンビでの活躍への期待が高まったのは、男子立位の三澤拓(SMBC日興証券)も同様だ。回転を得意とし、昨年のワールドカップ最終戦では8年ぶりとなる表彰台も経験したが、今季はスーパー大回転が比較的好調で、白馬でとうとう3位まで上がってきた。ソチ前から力を入れてきた体幹バランスの強化により、高速でもより安定したポジションがとれるようになった結果だろう。すでにベテランと呼べる域に達しているが、まだまだ進化する余地があることを結果で示した。チェア勢に負けない活躍で日本チーム全体を盛り上げていくのは、男子立位の三澤が担うべき役目だろう。

 白馬大会終了後、選手たちはすぐにワールドカップ最終戦出場のためにピョンチャンへと向かった。パラリンピック本番のコースで、どのようなレースをし、どのような情報を持ち帰るのか。そして、それをどのように活かしていくのか。すでに1年を切ったこれからの期間の取り組みが、高い実力を持つ日本選手たちの4年がかりの挑戦をピョンチャンで完遂させるための最後のピースとなるはずだ。

(取材・文:堀切功)

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