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リオパラリンピックが開幕!

開会式の花火(撮影:越智貴雄)

開会式の花火(撮影:越智貴雄)

◆ テーマは「限界なき心」

 果たして開会式のスタンドは埋まるのか? 競技チケットの売れ行きが伸び悩んでいたリオパラリンピックは、本番直前まで開会式の集客も不安視された。だが、その心配をよそに当日の会場はほぼ満席となり、大会組織委員会は開会式のチケットが完売したことを発表。のんびり屋のブラジル人は直前まで行動しないという習性が如実に表れた。

開会式の会場に入る観客(撮影:越智貴雄)

開会式の会場に入る観客(撮影:越智貴雄)

 8日18時15分(日本時間9日6時15分)に始まった開会式のテーマは「限界なき心」。チャレンジを恐れない障害者アスリートたちのエネルギーを、さまざまなパフォーマンスで表現するというコンセプトだ。

車いすや自転車の車輪を使った演目(撮影:越智貴雄)

車いすや自転車の車輪を使った演目(撮影:越智貴雄)

白杖をモチーフにした演目(撮影:越智貴雄)

白杖をモチーフにした演目(撮影:越智貴雄)

 例えば初っ端に飛び出した、車いすエクストリーム競技のアーロン・フォザリンガムによるアクロバティックな大ジャンプは観客の度肝を抜いた。また国旗掲揚の際、国歌を演奏したブラジル人ピアニストのジョアン・カルロス・マルチンスさんは、両手の指が萎縮する障害を抱えながら聴衆の心を打つ美しい音色を響かせた。あるいはパフォーマンスのトリを務めた両足義足のエイミー・パーディは生活用義足と「板バネ」と呼ばれる競技用義足の両方で、華麗なダンスを披露。前代未聞のロボットアームとの共演で会場を魅了した。エイミーは2014年ソチ冬季大会女子スノーボードクロスの銅メダリストだ。

 彼らのパフォーマンスは会場の観客だけでなく、世界中の人々を魅了したことだろう。

入場行進をする日本選手団(撮影:越智貴雄)

入場行進をする日本選手団(撮影:越智貴雄)

 参加159の国と地域の選手による入場行進もユニークだった。さまざまな障害、色とりどりの衣装に身を包んだ選手団の先頭は、シリアとイラン2人による難民選手団。難民選手団は五輪同様、パラリンピックでも結成された。これにアフガニスタンからアルファベット順に各国が続き、日本選手団も旗手である車いすテニスの上地結衣先導のもと、小さな日の丸の旗を持った選手たちが笑顔でスタンドに手を振った。

 パラリンピック初出場で初めて開会式を経験した陸上の大西瞳は、「あんなにスタンドがいっぱいなんて驚いた。観客の皆さんの声援が嬉しくて感激した」と話している。長時間にわたる入場行進が最後まで賑やかだったのは、盛り上げ上手なブラジル人のおかげといえるだろう。

開会式で盛り上がる観客(撮影:越智貴雄)

開会式で盛り上がる観客(撮影:越智貴雄)

◆ 国民感情噴出の一方、転倒した聖火ランナーに大声援

 ブラジル人の熱狂的な気質が異例の事態を招くシーンもあった。テレビ中継をご覧になった方も多いだろうが、大会組織委員会会長のカルロス・ヌーズマンがスピーチで政府の支援に謝辞を述べたところ、観客から激しいブーイングが起こり、1分以上の沈黙を強いられたのだ。

 また今月1日、弾劾裁判で罷免されたジルマ・ルセフ前大統領に代わって開会宣言をしたミシェル・テメル新大統領には、さらに激しいブーイングが浴びせられた。国家会計の不正の責任をルセフ前大統領に押し付けたとする国民感情が噴出した格好だ。

 本来、スポーツの場に政治を持ち出してはならないという五輪の精神にならうパラリンピックで、このような事態になったのは残念だった。

 だが、重苦しい空気はフィナーレで一変した。聖火の到着だ。4人の聖火ランナーのうち2番手を務めたパラリンピック陸上のメダリスト、マルシア・マルサルさんが降りしきる雨の中、右手で杖をつきながらゆっくりと歩みを進める最中、バランスを崩して転倒。会場は一時、騒然としたがスタッフに抱きかかえられて起き上がったマルサルさんは、観客の大声援に後押しされるように、落としたトーチを再び握り次のランナーに手渡した。

 このアクシデントはまさに、パラリンピアンの不屈のチャンレンジ精神を象徴するシーンとして、パラリンピックの歴史に刻まれた。

 低予算ながらも知恵と工夫を凝らし、そして人間味あふれる名場面が飛び出した開会式は、これから始まる熱戦のドラマを予感させる幕開けだったと言えるだろう。

(文・高樹ミナ)

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