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競技レポート

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国枝・斎田ペアが銅メダル! リオパラリンピック

男子ダブルス(国枝・斎田)=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

男子ダブルス(国枝・斎田)=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

◆ 安堵から二人とも思わず涙

 メダルを持たずに日本へ帰るわけにはいかないーーー。その執念が勝敗を分けた大一番だった。

 リオパラリンピックの車いすテニスは大会9日目にあたる15日、男子ダブルスの3位決定戦が行われ、前日、英国ペアに負けた国枝慎吾(ユニクロ)・斎田悟司(シグマクシス)と、三木拓也(トヨタ自動車株)・眞田卓(吉田記念テニス研修センター)との日本人対決となった。その結果、国枝・斎田が3-6、4-6のストレート勝ちで銅メダルを獲得した。

 2000年シドニーパラリンピックからペアを組む国枝・斎田は、2008年アテネ大会で金メダル、2008年北京大会で銅メダルに輝いた名コンビだ。さらに前日には国枝がシングルスの準々決勝でまさかの敗退。悪夢のような事実が斎田にも大きな重圧となってのしかかっていた。だがそれは、ダブルスで何としてもメダルを取るという強い意志に変わったという。

 驚いたのは二人が揃って流した涙だ。百戦錬磨のベテランが若手に勝って涙するとは……。この涙の理由について国枝は、「シングルスで負けて悔しい思いをして、リオは苦い大会になったなと思っていた。でもダブルスで銅メダルが取れて、少し救われた気がする」と胸中を語った。斎田も「毎日がプレッシャーだったが、やっと解き放たれた。ほっとして思わず涙が出た」と、二人がいかに張り詰めた状況に置かれていたかを物語った。

男子ダブルスで銅メダルマッチ勝利後に涙する斎田と国枝(撮影:堀切功)

男子ダブルスで銅メダルマッチ勝利後に涙する斎田と国枝(撮影:堀切功)

◆ 勝敗を分けた両ペアの対照的な戦略

 試合は終始、競った内容だった。両ペアの戦略は国枝・斎田が守備型、三木・眞田が攻撃型と対照的。アウトコートが広いリオのセンターコートでは車いすの可動範囲が広がり、2バウンドの返球がしやすいため守備を固めやすい。その特性を生かそうと国枝と斎田は考えた。一方、挑戦者の立場の三木と眞田は相手の緩やかなペースに合わせず、積極的に打ってチャンスを作り、ポイントを決めていく作戦に出た。

 だが、三木と眞田はポイントを挙げる一方でミスも目立ち、見せ場を作りながらも勝利を引き寄せることができず、対する国枝・斎田ペアは、斎田がスピンのかかったロブで粘り強くラリーをつなぎ、浅くなったチャンスボールを国枝が決めるか、相手のミスを誘うかして手堅くポイントを重ねていった。

 一進一退の攻防の末に勝利した国枝は、「どちらがミスをするかという展開で、ウイナーを狙うのも大事だが、ミスをしないことのほうが大事だった」と分析。しかしそれは積極的なテニスとは言いがたく、「あまりああいうプレーはしたくなかったが、パラリンピックでメダルを取るために割り切った」と話している。さらに、自分たちが準決勝で敗れた英国ペアの攻撃的なプレーを引き合いに出し、「今日の僕らの試合がつなぎ合いのようになってしまったのは、今の日本人選手の実力の表れ。そこは反省点」とも指摘した。

男子ダブルスの斎田(撮影:越智貴雄)

男子ダブルスの斎田(撮影:越智貴雄)

◆「まだ若い者には負けられない」と国枝

 パラリンピックのメダルと大先輩を負かして大金星を狙った三木と眞田は試合後、悔しさをにじませながらも、自分たちの攻撃的なテニスができたことを評価した。それと同時に「僕らがポイントを決めるかミスをするかだった。もっと打球の精度を上げなければ」と眞田。三木も「攻めておきながら大事なポイントを取り逃がした」と敗因を挙げた。

 車いすテニスは今大会でも注目競技の一つだった。その中で男子は日本人選手の新旧対決となり、若い世代は現在主流になりつつあるドライブボレーなどを多用した新世代のテニスを見せてくれた。また、長きにわたり日本の車いす界をけん引してきた国枝と斎田も、「まだまだ若い者には負けられない」と笑顔。2020年東京パラリンピック挑戦に意欲に見せている。また4年後に大きな楽しみができてしまった。

(文・高樹ミナ)

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