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パラ・世界選手権大会

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「パラスノーボーダーはなぜ義足を見せるのですか?」平昌でアスリートへ突撃インタビュー

金メダルを獲得した米国のマイク・シュルツ(撮影:越智貴雄)

 平昌パラリンピックの花形種目の一つであるパラスノーボードで、目立ったのは義足をあらわにする選手たちだった。
 今回は「なぜ義足を見せているのですか?」と、試合終了後の選手に突撃インタビューを試みた。

恥じらうものではない

「理由は3つ」そう切り出したのは、ルーマニアのミハイタ・パパラだ。
「まず、服が破けないようにするためです。何度も義足がひっかかってウェア(ズボン)を切ってしまったから、そうならないように義足の部分は外に出すようにしています。そして2つ目は、競技の時は素早い着脱や調整のためにカバーしていません」。
 ミハイタ・パパラは2005年に交通事故で左足を切断し、その2年後にスノーボードを始めたアスリートだ。意外にも合理的な理由を上げるミハイタ・パパラにその義足を見せてもらうと、膝位置の後部に青・黄・赤の縦三色がペイントされていた。ルーマニア国旗をイメージした義足を誇らしげに見せ、最後の理由に「この足は障がいではあるけど、何も恥じらうものでもない」と笑顔で答えた。
 ミハイタ・パパラが出場した競技は、膝上の切断など下肢(下半身)に重度の障がいのあるクラス(SB-LL1)で、出場した12日の競技では、全13選手中、6人が義足を露出させていた。

山本篤の滑り(撮影:越智貴雄)

 そのクラスに出場している日本人選手の山本篤も義足を見せている一人だ。予選を走り終わった山本に質問をすると、「スノーボードが好きな人たちの中には、やりたくてもやり方がわからない人もいます。これを見て『義足で滑ってる人がいたよ』って話題になれば、その人達にも話が広がり、スノーボードを始める人が増えてくれるかもしれません。そうなったら嬉しい」と将来のプレイヤー誕生への期待感を伝えてくれた。

義足はファッション

 予選で山本篤と戦い、このクラスで金メダルを獲得した米国のマイク・シュルツは、選手のプレーに沸いたスタンド席を見てその理由をこう語る。
 「この競技はパラスノーボーディングですから、観戦している方たちが目に見える違いに気がつけなければその意義が伝わらない。観客の皆さんも『あの選手は足をなくしているのにすごい!』と思えるでしょう」と観客へのサービス精神を覗かせた。マイク・シュルツの義足は赤と青の二色が基調としており、「星条旗カラーだよ。この素晴らしい装備を見せるのが大好きなんだ」と笑顔を見せた。
 女子競技の同クラスに出場し、金メダルを手にした米国のブレナー・ハッカビーは「自分が成し遂げた結果に自信を持っているから、義足を見せています」と話した上で、ファッション性にも触れる。
「私のお気に入りの紫色がとても気に入っていて、それを見せたいという気持ちもあります」。 
 アスリートの声を聞くと、どの選手も総じて義足を誇りに感じ、パラリンピックという世界の舞台で義足を「魅せて」いることがわかる。

パラリンピックは格好いい義足を見るチャンス

 とはいえ、取材を進めていけばいくほど、アスリート以外の義足をつける人たちの声が気になってくるものだ。すると、先述のミハイタ・パパラがインスタグラムを通じて連絡をくれ、一般の義足事情についてこうメッセージを寄せてくれた。
 「義足を使っている私たちの多くは、それを隠さなければいけない、あるいは隠したいと思うものです。理由は、恥じらいや恐れ、フラストレーション、社会からのプレッシャーなど様々です」。
 2000年からパラリンピックを取材し、義足の女性たちの写真集「切断ヴィーナス」を撮影した写真家の越智貴雄は、義足に対する日本の状況を説明しながら呼びかける。
「日本では義足を隠さなければいけない雰囲気があり、まだまだネガティブイメージが根強いです。情報量が豊富で、障がいのある人が露出してきた東京はまだしも、地方に行けば行くほど義足を見せることには理解が薄いです。本人にとってみればメガネと一緒で、おしゃれなメガネをかける人もいれば、機能性重視の人もいます。パラリンピックは選手たちの格好いい姿を見るチャンスです。太陽を浴びてキラッと光った義足の素晴らしさをぜひ見てほしい」
 競技はもちろん、身なりや振る舞いのすべてがパラアスリート一人ひとりの表現につながっている。それを楽しむチャンスが今回の平昌冬季パラリンピックだ。スノーボードは16日、バンクドスラロームが開催され、記事に登場する選手たちは全員出場する。義足の見方がガラリと変わるはずだ。

(文・上垣喜寛、鈴木貫太郎)

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