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パラスポーツで“密”な青春を! 大盛況のパラ大学祭が目指すもの

7回目の「パラ大学祭」が都内で開催された(撮影:越智貴雄)

 大学生や専門学校生がパラスポーツを体験するイベント「第7回パラ大学祭」が10月2日、東京都の新豊洲Brilliaランニングスタジアムで開催された。
 イベントには、関東の大会では過去最大となる16チーム、約90人の学生が参加。車いすバスケットボールやボッチャなど4競技を行い、試合結果に応じて配分されるポイント数で対抗戦を繰り広げた。

優勝したのは、埼玉県立大学 車いすバスケサークルに所属する1年生で構成されたメンバーたち(撮影:越智貴雄)

 優勝チームは、今回初めて出場した埼玉県立大学の1年生5人。大学では、車いすバスケットボールサークル「SPREAD」に所属していて、車いすバスケと車いすリレーで圧倒的な強さを見せた。メンバーの菅藤流河さんは、「めちゃくちゃ楽しかった。次もまた出たいです」と声を弾ませた。

特に盛り上がりを見せたボッチャ競技。双方の参加者たちが得点を確認しあう様子(撮影:越智貴雄)

 パラ大学祭は、東京オリンピック・パラリンピックの1周年記念事業として開催された。大会を主催したNPO「D-SHiPS32」の上原大祐代表は、元パラアイスホッケーの日本代表選手で、2010年のバンクーバー大会では銀メダルを獲得した経歴を持つ。今はD-SHiPS32の活動などを通じて、パラスポーツの普及活動に専念している。ただ、上原さんは立場としては主催者団体の代表だが、「僕は、学生たちが決めたことを承認しているだけなんです」と笑う。

学生運営メンバーの代表、上智大学4年の斎藤ましろさん(撮影:越智貴雄)

 パラ大学祭は、イベントの企画内容から当日の進行まで、学生主体の組織が中心となって運営されている。今大会では、大会当日のボランティア4人を含む計15人が7月から準備を進めてきた。メンバーには、車いすユーザーの学生もいる。学生運営メンバーの代表で、上智大学4年の斎藤ましろさんはこう話す。
「パラスポーツは、誰でも参加できるように、ルールを変えることができます。私は、どちらかというと運動が苦手なんですが、パラスポーツは既存のスポーツのルールにこだわらないから、性別も障がい者も関係ない。みんながスポーツを楽めるように工夫することが楽しいので、そのことをたくさんの人に知ってもらいたい」

車いすバスケットボールを行う参加者たち(撮影:越智貴雄)

 今大会では、学生たちが中心となって新しいパラスポーツを開発するためのワークショップを事前に開催し、オリジナルスポーツも実施された。「目隠しで繋げ!×の字サッカー」と名付けられた競技は、アイマスクで目隠しされたプレイヤーを、ボールに触れてはいけない伴走者が声を出してボールの位置を指示し、ゴールを目指す競技だ。ブラインドサッカーを初心者でも楽しめるように改良された競技だが、「細かいルールは、大会当日の午前に実際に競技をやって決めた」(学生運営メンバーの一人)という。実際に競技が始まると、最初はプレイヤーも伴走者もぎこちない動きだったが、次第に目隠しをしたままボールを激しく奪い合う場面も見られた。応援する学生たちからは、歓声が次々とあがった。

大会を主催した、バンクーバー・パラリンピック銀メダリストで、NPO「D-SHiPS32」代表の上原大祐さん(撮影:越智貴雄)

 上原さんがパラ大学祭を通じて目指すものは「パラスポーツの日常化」だ。そのため、「パラ大学祭は障がい者だけにフォーカスするのではなく、どんな人でもパラスポーツを楽しめるんだよということを知ってもらいたい」と考えているという。パラスポーツを楽しむ人が増えれば、体育館や競技場の施設も使いやすくなる。健常者と障がい者が一緒のチームになれば、障がい者がスポーツする時の悩みとなる移動の問題も、手伝ってくれる人が増える。上原さんは閉会式の挨拶で参加した学生を前にこう話した。
「(日本では)今でも車いすでは体育館を貸してくれないところがたくさんあります。『障がい者お断り』というところもたくさんあります。なので、みなさんがパラスポーツを楽しんでくれるだけで、日本のパラスポーツの課題解決につながるんです」
 学生が運営する、学生のためのパラスポーツ大会。大きな歓声と声援が飛び交ったパラ大学祭は、来年以降も参加チームが増えていくことを目指す。

文:土佐豪史

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