カンパラプレス

ニュース

ニュース

スポーツ義足の第一人者、臼井二美男氏が、「2016 毎日スポーツ人賞」文化賞を受賞!

リオデジャネイロパラリンピックに出場した大西瞳選手(左)の義足を調整する臼井氏(撮影:越智貴雄)

リオデジャネイロパラリンピックに出場した大西瞳選手(左)の義足を調整する臼井氏(撮影:越智貴雄)

 その年にスポーツのあらゆる分野で顕著な功績を上げた人物や団体を表彰する、「2016 毎日スポーツ人賞」の表彰式が12月12日、東京都内のホテルで行われ、24回目を迎えた今年の「文化賞」に義肢装具士の臼井二美男氏(鉄道弘済会義肢装具サポートセンター)が選出された。パラスポーツ界からは他に、ベストアスリート賞にパラ競泳の木村敬一選手(東京ガス)が、新人賞にパラ陸上の佐藤友祈選手(グロップサンセリテWorld-AC)が選ばれ、パラスポーツ界の勢いと充実ぶりを感じさせた。

 臼井氏の選出はスポーツ義足の研究開発や製作にも取り組み、その第一人者として長年、多くの選手を支え、絶大な信頼も得ていること。切断障害者の陸上クラブ「ヘルスエンジェルス」も自ら主宰し、すでに複数のパラリンピアンを輩出しているうえ、これから世界を目指そうとする選手も多数サポートし、障害者スポーツの発展に大きな貢献を果たしている功績が評価された。

受賞式でスピーチを行う、臼井二美男氏(撮影:星野恭子)

受賞式でスピーチを行う、臼井二美男氏(撮影:星野恭子)

 臼井氏は、「基本的に『縁の下の力持ち』のつもりですが、30年やってきたことが評価されたのかなと思う」と受賞の喜びを穏やかに語り、スポーツ義足づくりでの心構えとして、「障害を持った方は選手になるまでに超えなければいけないことがいろいろある。どうしたら気持ちよく走れるかや、親御さんの気持ちなど、そういうことを一人ひとりに対して想像してあげることが大事。(ヘルスエンジェルスの練習会に)初めてきたときは歩くのがやっとで、なかなか走ることもできない選手が、数年後に羽ばたいてくれるのを見ると、感動的です」と目を細めた。

 表彰式後、さらに会見に応じた臼井氏は、「選手を支える場合、長く続けることが支える側の責任でもある。そこを評価されたのなら嬉しい」と受賞の感想を話し、これからは自分のように評価されるような後進を育てることにも力を注ぎたいと、今後の活動への目標も語った。

 受賞理由のひとつでもある、陸上クラブ「ヘルスエンジェルス」は1991年に立ち上げた。臼井氏の義足と出会って走り出し、新たな人生が開けた人も少なくない。最初は数人だったメンバーが、今は100名を超える。

 障害を負った人の気持ちがスポーツへと向くまでには乗り越えることが多く、やリ始めてもいろいろな不安やトラブルなど、たくさんの障壁がある。「だから、『義足に関しては、(僕に)任せなさい』という気持ちで向かい合うと信頼してくれるし、その人がどんどん変わっていくことを経験から分かっている。今後も、『支援できる』という自信をもって、一緒に寄り添ってあげたい」と、さらなる意欲も示した。

 臼井氏はまた、義足をはじめ、競技用車いすなどパラスポーツで使用する道具の機能的なレベルは向上しているが、「機能ばかりあがっても、それを使いこなせないとダメ。義肢の特性プラス、それを使いこなす(選手の)体力や技術などを総合的に深めないと最大のパフォーマンスは発揮できない。一人の選手に対して、さまざまな角度から皆で協力することが大事」と、厚みのある支援体制の重要性も指摘。さらに近年、パラスポーツに関する報道の影響もあり、「スポーツにチャレンジシしたいという人も増えているが、受け入れる側として義足に関してはまだまだ少ない。全国にサポート体制が増えればいいと思う」と活動の広がりへの期待も述べた。

 なお、会場にはヘルスエンジェルスのメンバーなど臼井氏を慕う人たちも多数、祝福に訪れていた。会見の終わりに臼井氏は、背広の下に身に着けていたウエストポーチを自ら報道陣に披露し、「なかに義足調整用の工具が入っています。今日は客席に選手たちも来ていましたので、(義足に)何かあったときにと思って。(ポーチは)いつも持っています。僕の秘密です」と人懐こい笑顔を見せ、会見場をあとにした。

パラ水泳の木村選手、パラ陸上の佐藤選手も栄誉

「2016 毎日スポーツ人賞」ベストアスリート賞に選ばれた木村敬一選手(撮影:越智貴雄)

「2016 毎日スポーツ人賞」ベストアスリート賞に選ばれた木村敬一選手(撮影:越智貴雄)

 ベストアスリート賞は常設でなく、グランプリと並ぶほどの顕著な活躍が認められた場合に贈られる賞として、昨年初めて選ばれた体操の内村航平選手につづき、今年はパラ競泳の木村選手が選出された。北京から3大会連続でパラリンピック代表となり、リオでは5種目に出場して銀2個、銅2個を獲得。前回ロンドン大会での2つと合わせ、6個のメダルを獲得した激闘と実績が評価された。

 木村選手は、「このような栄誉ある賞をいただき、光栄です。また、パラリンピック選手がこのような形で評価されることも嬉しく思います。リオでは目指していた金メダルを獲れず悔しい思いをしたが、多くの方から祝福していただき、今は4つのメダルを獲れたことを誇りに思いたい。今はパラリンピックスポーツが盛り上がっている大切な時期。この火を絶やさぬよう、さまざまな形で関わり、4年後の東京パラリンピックの会場を満員にできるよう頑張りたい」と力を込めた。一方で、「2016年は……、疲れました。2017年は競技にも生活にも、心に余裕をもっていきたい」と、茶目っ気たっぷりな“目標”も口にした。

「2016 毎日スポーツ人賞」新人賞を受賞した佐藤友祈選手(撮影:越智貴雄)

「2016 毎日スポーツ人賞」新人賞を受賞した佐藤友祈選手(撮影:越智貴雄)

 また、新人賞には選ばれたのは、競技歴4年ながら急成長を見せ、リオ大会で銀メダル2個に輝いた才能と努力が評価され、パラ陸上の佐藤選手。「4年前のロンドンパラリンピックをテレビで観て、『次のパラリンピックの舞台に立つ』と思って競技を始め、その舞台に立て、メダルを獲得できて良かったと思います。多くの支えのおかげで、リオで結果を出すことができました。(2020年)東京では、出場する全種目で金メダルを獲れるように頑張ります」と受賞の喜びと、強い意気込みを語った。

文・星野恭子

<2016 毎日スポーツ人賞>

・グランプリ:リオデジャネイロ五輪陸上男子400 メートルリレー日本代表
・ベストアスリート賞:木村敬一選手(パラ水泳/東京ガス)
・新人賞:佐藤友祈選手(パラ陸上/グロップサンセリWorld-AC)
・新人賞:畑岡奈紗選手(プロゴルファー/ルネサンス高等学校)
・文化賞:臼井二美男氏(義肢装具士/鉄道弘済会義肢装具サポートセンター)
・功労賞:故・平尾誠二氏(ラグビー)

「毎日スポーツ人賞」は毎日新聞社の主催で1993年に創設された、スポーツ分野で功績を挙げた人物や団体を讃える賞。競技団体や報道各社などからの推薦をもとに選考委員会によって選出される賞で、グランプリと新人賞、文化賞は常設賞で、毎年選出される。ベストアスリート賞はグランプリと並ぶ活躍をした選手に贈られ、故人に贈られる功労賞とともに、該当者がいた場合に選出される。

page top