フォトニュース — 2017年5月8日 at 3:50 AM

「見て」「やって」知るパラ競技の魅力 ~ノーリミッツスペシャル 2017 上野~

高桑早生選手の助走に「姿勢が美しい」と朝原氏(撮影:越智貴雄)

高桑早生選手の助走に「姿勢が美しい」と朝原氏(撮影:越智貴雄)

 5月6、7日、上野恩賜公園竹の台広場では、パラリンピック競技の魅力を体感できる国内最大規模のイベントとして 「ノーリミッツスペシャル 2017 上野」が開催された。6日には、小池百合子東京都知事が「パラリンピアンに挑戦!五番勝負」に参加し、射撃や車いすテニスなどを体験した。7日には、Bリーグ所属のプロバスケットボールプレーヤーが登場し、車椅子バスケットボールの選手と対戦。シュート対決や2on2などで、会場を盛り上げた。さらにパラリンピアンによる走り幅跳びでは、世界レベルの跳躍に観客から大きなどよめきと拍手が沸き起こり、パラリンピック競技を楽しむ観客の姿が多く見られた。そのほか、東京2020パラリンピック全22競技のパネル展示や、ボッチャやゴールボール、ブラインドサッカーなどの体験コーナーもあり、会場は大きな拍手や笑い声に包まれていた。

イベント後のフォトセッション。同じプレーヤーとして刺激を受けることも。Bリーグも車椅子バスケも、ともに盛り上げていく(撮影:斎藤寿子)

イベント後のフォトセッション。同じプレーヤーとして刺激を受けることも。Bリーグも車椅子バスケも、ともに盛り上げていく(撮影:斎藤寿子)

Bリーグ選手が車椅子バスケに挑戦

 7日、ゴールデンウィークの最終日にふさわしい青空の下、メインアリーナでまず最初に行われたのは「車椅子バスケットボール Show Supported by B.LEAGUE」。Bリーグの東京エクセレンスに所属する長澤健司、泉秀岳、飛田浩明、石田剛規と、車椅子バスケットボールプレーヤーの村上直広、古澤拓也、鳥海連志、三宅克己が一人ずつ紹介され、それぞれの得意のシュートを披露しながら登場した。

 会場に用意された観客席は満員となり、立ち見が出るほどの賑わいの中、Bリーグの選手も車椅子に乗り、「チェアスキル」と言われる車椅子操作の難しさを体験。リレー競争では、車椅子バスケットボールチームには車椅子をバックさせて走ることに加えて、最終ランナーは2周するというハンデがあったものの、Bリーグの選手たちは初めての車椅子操作に苦戦し、バックでも全く苦にしない車椅子バスケットボールチームが余裕の表情で、先にゴールした。

 しかし、スリーポイント対決では、車椅子バスケットボールの村上、古澤が1本も入れることができなかったのに対し、プロの意地を見せたのが飛田だった。1本目は外したが、観客が手拍子で音頭を取る中、2本目はきれいに決めてみせ、沸き上がるスタンドにダブルピースで応えた。その後は、2on2や、3on4(車椅子バスケットボール選手3人に対し、Bリーグ選手4人)を行い、最後の車椅子バスケ選手同士の2on2では、試合さながらの迫力あるプレーで転倒シーンが続出。飛田も「まるで格闘技を見ているかのようだった」と、プレーの激しさに驚いていた。ゴール下での「ティルティング」(高さを出すために片方のタイヤを浮かせる)という車椅子バスケならではの技に、観客は目を釘付けにしていた。

 また、イベント中、司会者からマイクを向けられた車椅子バスケ選手が笑顔で「全然、余裕です」と発言すると、Bリーグ選手も「負けられない」と答えるなど、互いに火花を散らすトークサービスで会場を盛り上げ、観客を楽しませていた。

 試合後のインタビューでは、Bリーグ選手は「奥が深い競技だと思った」「(ゴールに向けての)風景がいつもとは違い、難しさを感じた」「動かせる範囲が限られている分、テクニックが重要な競技。その点は、自分のプレーにも生かせると思った」などと感想を述べた。一方の車椅子バスケットボール選手は、「さすがはプロ。車椅子に乗ってもシュートがうまい」「自分ももっと練習しなければいけないと思った」と語り、プロ選手から刺激を受けていた。そして互いに「同じバスケットボールとして、五輪もパラリンピックも盛り上げていきたい」と、2020年に向けて意気込みを示した。

リオ銀の山本篤が、上野公園で世界記録に挑戦。跳躍に来場者から拍手喝采(撮影:越智貴雄)

リオ銀の山本篤が、上野公園で世界記録に挑戦。跳躍に来場者から拍手喝采(撮影:越智貴雄)

リオパラ銀メダリストたちの跳躍に拍手喝采

 フィナーレイベントとして行われた「幅跳び決戦!世界記録に挑戦」では、男子は昨年のリオデジャネイロ・パラリンピック銀メダリスト山本篤と、同4位入賞のレオン・シェーファー(ドイツ)、女子では2015年世界選手権銅メダリスト高桑早生が登場し、それぞれ世界記録、日本記録に挑戦した。

 イベント最後のエキシビションということもあり、メインアリーナに設置された跳躍スペースの周りには、大勢の観客が詰めかけた。その状況について、ゲストの朝原宣治(北京五輪4×100mリレー銀メダル)「アスリートは見られてなんぼ。3人にとっては嬉しいシチュエーションだと思う」と言うと、山本も「沢山の人に見てもらえればもらえるほど燃える」と意気込んだ。

 100mのアジア記録を持ち、スプリント力を活かした跳躍で2015年の世界選手権では自己ベストの5m09で銅メダルを獲得した高桑。スタート前にゲストの寺川綾(ロンドン五輪100m背泳ぎ銅メダル)に心境を聞かれると、「まるでパラリンピック決勝最後の1本というくらい緊張している」と笑顔で答えた。1本目の記録は4m44。それでも山本が思わず「バッチリじゃん」とつぶやくほどの踏み切りを見せ、今シーズンの調子の良さをうかがわせた。2本目は4m63。日本記録には及ばなかったが、「助走の姿勢が美しい」と朝原から賞賛され、高桑自身も「今できることは出せた」と語った。

 昨年のリオで自己新の6m06をマークし、表彰台まであと一歩に迫る4位入賞したシェーファーは、山本が「今、一番成長著しいジャンパー」と警戒心を露わにする19歳。昨日、ドイツから到着したばかりで、これが今シーズン初跳躍としながらも、「とても調子がいいので、ぜひ自己記録を超えたい」と語った。シェーファーが男子ならではの高さのある跳躍をすると、会場からは「おー!」という感嘆の声がもれた。しかし、意外に記録は伸びず、5m67にとどまった。「今度こそ」と挑んだ2本目では、踏切の際に義足が折れるというアクシデントが起こり、結局自己ベスト更新とはならなかった。それでも会場からの温かい拍手に「ベストを尽くした。2020年に、また東京で会いましょう」と、笑顔で応えた。

 昨年、一時は世界記録保持者となるなど、世界トップレベルの跳躍をもつ山本は、「必ずシェーファーの記録は超える」と意気込んだ。1本目から山本らしい滞空時間の長い跳躍を披露すると、どよめきと拍手が沸き起こり、会場のボルテージは最高潮に上がった。しかし、着地の際、踏切足の義足側が先に土に触れてしまい、5m18という山本にとっては不甲斐ない記録に終わった。さらに集中力を高めて臨んだ2本目は着地のミスはなかったが、やはり70cmという高さでの跳躍は難しかったのか、5m92にとどまった。それでも、空を駆け抜けるかのような山本の跳躍に割れんばかりの拍手が沸き起こった。

 結果的には、いずれも記録には届かなかったが、3人の「NO LIMITS」でのチャレンジに、会場からは温かい拍手が送られた。

 エキシビション後には、山本も高桑も口をそろえて「今度はぜひ、競技場に来て、見てほしい」と語った。このイベントがパラリンピック競技の認知にとどまらず、競技場に足を運ぶきっかけになることを期待したい。

(取材・文:斎藤寿子)