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パラコラム

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大盛況のリオパラリンピック 大会で起きたあれこれ

閉会式の様子=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

閉会式の様子=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

◆ 大会で起きたあれこれ

 南米初開催で話題となったリオパラリンピックが閉幕した。18日(日本時間19日)に行われた閉会式は、大会の成功を祝うリオ市民の歓喜にあふれ、次期開催都市である東京のフラッグ・ハンドオーバー・セレモニーでは小池百合子都知事がパラリンピック旗を引き継いだ。東京大会の開催は2020年8月25日から9月6日までの13日間。これに先立ち五輪は7月24日から8月9日まで行われる。

 IPC国際パラリンピック委員会のクレバイン会長から小池百合子知事に旗が引き継がれた=リオパラリンピック閉会式(撮影:越智貴雄)

IPC国際パラリンピック委員会のクレバイン会長から小池百合子知事に旗が引き継がれた=リオパラリンピック閉会式(撮影:越智貴雄)

◆ ロシアのドーピング問題

 リオパラリンピックを振り返ってみると大会前、五輪でも騒動になったロシアのドーピング問題があった。だがIPC(国際パラリンピック委員会)の決断は早く、国ぐるみと見られるロシアのドーピング隠蔽を断固として許さず、全競技にわたってリオ大会への出場禁止を決めた。
 ロシアは五輪同様、パラリンピックでも強豪国の一つだ。前回のロンドン大会では中国に次ぐ36個の金メダルを獲得していることや参加人数も多いことなどから、大会への影響は否めなかった。しかし、IPCはロシアのしたことはパラリンピックの意義や価値を脅かす行為と判断。陸上競技などで一部出場禁止となった五輪とは真逆の英断を下した。
 ちなみにロシアを欠いた今大会には159カ国・地域および難民選手団から4333人以上が参加し、史上最大規模となった。

◆ 女子ゴールボールでアルジェリアが到着せず

 大会期間中は女子ゴールボールのアルジェリア代表選手団が現地に到着しないという異例の事態も起きた。アルジェリアは9、10日の1次リーグ2試合を航空機の遅延を理由に欠場し不戦敗に。対戦相手は米国とイスラエルだったため、パレスチナ問題などをめぐる対立感情からイスラエルとの対戦を拒否したのではないかとの憶測が流れた。
 もしそうだとすれば、平和と友好を掲げるスポーツの祭典に政治的な意図を持ち込んではならないパラリンピックと五輪の理念に抵触する。この事態を重く受け止めたIPCはすぐさま事実関係の調査に乗り出し、場合によっては競技からの除外も視野に入れた。
 結局、アルジェリア選手団は大会5日目にあたる11日に到着。12日には同じ1次リーグC組の日本と対戦し7-1で日本が勝利した。日本代表選手団は、アルジェリアの出場資格剥奪と対戦全チームの不戦勝および得点を10-0にすることを求めた要望書を国際視覚障がい者スポーツ連盟に提出するも認められず、アルジェリアに対する制裁も加えられなかった。その後も真相は明らかになっていない。

陸上男子1500m(T13)で4人がリオ五輪の優勝記録を上回った。左から2番目が金メダルのアルジェリアのバカ選手(撮影:越智貴雄)

陸上男子1500m(T13)で4人がリオ五輪の優勝記録を上回った。左から2番目が金メダルのアルジェリアのバカ選手(撮影:越智貴雄)

◆ 世界記録連発で五輪をしのぐ記録が誕生

 リオパラリンピックでは22競技528種目で、実に200超の世界記録が生まれた。中でも話題となったのは陸上男子1500m(T13:視覚障害のクラス)で4人もの選手がリオ五輪の優勝記録を上回ったことだ。
 リオ五輪の金メダリストであるマシュー・セントロウィッツ(米国)の記録は3分50秒00。これに対し、パラリンピックで金メダルに輝いたアブデラティフ・バカ(アルジェリア)は3分48秒29。リオ五輪は異例のスローペースで、セントロウィッツ自身の自己ベストも3分30秒40であることから、一概にパラリンピックが五輪を上回ったとは言い難いが、パラリンピックのトップ選手にも五輪出場を要望するケースが出てきているだけに、五輪の門戸解放についての議論は激しくなりそうだ。

◆ 低調だったチケット販売が85%達成

 250万枚が用意されたリオパラリンピックの観戦チケットは、開幕前にはわずか12%しか売れておらず、先行きが心配されていた。しかし、開幕が近づくと売れ行きは徐々に伸び、最終的にはチケット総数250万枚のうち85%にあたる210万枚が売れた。これは前回ロンドン大会に次ぐ史上2番目の記録。
 背景には、直前にならないと動かないといわれるブラジル国民の気質に加え、チケット価格の引き下げやスポンサー企業による学校への配布などの努力があったと見られている。
 そのおかげで客足は伸び、会場は連日盛況。リオ大会は蓋を開けてみれば、パラリンピックの成功例と言えるだろう。

 最後になるが、17日に行われた自転車男子個人ロードレースで転倒し亡くなったバハマン・ゴルバルネジャド(イラン)のご冥福を心よりお祈りする。

(文・高樹ミナ)

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