カンパラプレス

パラ・世界選手権大会

パラ・世界選手権大会

「おはよう」なのか「こんばんは」なのか -親友がパラリンピックに出るそうで-

チェコ戦で倒れながらも味方に声を出す上原大祐(撮影:越智貴雄)

 パラアイスホッケー日本代表は13日、チェコ(世界ランキング6位)と対戦し0-3で敗れた。これで平昌パラリンピック予選リーグ3戦を終え、3敗。予選リーグ敗退となり、14日からは5-8位決定戦に挑む。試合直後の上原大祐選手(以後:大ちゃん)に再び「インタメビュー(私と大ちゃんは同じ36歳ということで、タメ語でのぶっちゃけインタビュー)」を決行した。

インタメビュー(3/13)

–昨日(3/12)のオフは何をしてたの?

(大ちゃん)「パラの休日」はですね、知り合いが選手村に入村したので案内したり、のんびりしたり、フランスパン食べたりしてた。

–ちなみにヒゲを剃らないのはげんかつぎ?

(大ちゃん)いや、アイスホッケーの世界では本当は負けたら剃らなくちゃいけないんだよ。だから勝ち続けている人ほどボッサボサ。これはただの剃り忘れ(笑)。

–わかりました(笑)。とにかく休日はゆっくり休んでいたと。

(大ちゃん)あとOttobockのブースに行って、日本のチームにメカニック(スポーツチーム内でスポーツ用具・機器の修理やメンテナンスを行うメンバー)がいないことを、解決しようという話になった。

–11日のインタビューで課題にあげていたことだよね。

(大ちゃん)Ottobockさんには我々のシューズやスティックを直せる技術があるので、選手側にそういうニーズがあるって伝えた。今回のパラでそのマッチングができたんだよね。

–それは大きいね。

(大ちゃん)パラ用具を直す機械って、例えば義肢装具士さんの学校にはあるみたいで、パラに関わりたいと思っている学生さんもいる。だったらそこのマッチングも図ろうよ、ってなった。スポンサー企業をつけて、学校の支援もしつつ。もともとやろうと思ってたんだけど、いよいよリアルになってきた。

–一昨日のインタビューからの展開がすごい。リンク降りてもスピード早いね。

(大ちゃん)ありがとうございます(笑)

–今日の試合は、どうだった?

(大ちゃん)色々と、あと一歩なんだよね。ワンツーまでいけるんだけど、スリーがなくてそこでパスが途切れたり。正面突破が難しいから、左右に振ることを考えすぎちゃってシュート数が少なかったり。

–どうすればいいの?

(大ちゃん)それはイメージの問題なんだよ。試合の流れを主観で見ているだけじゃなくて、真上から客観視できるかということなんだよね。そこがまだできていないな。

–経験が足りてないの?

(大ちゃん)それもある。あと、世界レベルの試合動画をみんなで見る時間も少ないし、そもそも過去の試合を分析できている人がいない。ノルウェーとかは分析するソフトがあって、分析班がいる。アメリカもカナダも。ビッグデータを解析している。

–日本の技術力ならできること?

(大ちゃん)全然できる!

パラはみんなのもの

—一方で、練習の時間帯が深夜とか早朝なのが問題なんだよね?

(大ちゃん)そう。週1回か2回しか練習できないのもそうだし、リンクが閉まってからの夜中しか我々は練習できない。長野はオフィシャルトレーニングセンターになったからまだいいんだけど。前はチームで合宿しても、夜11時から始めて夜中1時に終わって、また4時間後の早朝5時に練習が始まることもあった。

–夜中に2回やってたんだ。

(大ちゃん)一般滑走で日常埋まってることが多いんだよね。でも、あまり人が入ってない時間もあるんだよ。だったら週に何回か日中2時間ちょうだいよ、ということを交渉していきたい。スケートリンクは区営とか市営が多いから、自治体の皆様にアプローチする。

–早朝練習を続けるのは大変だよね。

(大ちゃん)練習に行くと「あれ、今って『おはよう』『こんばんは』どっちだ!?」って迷っちゃうときがある(笑)。我々はその境目でホッケーしてるわけよ。夜と朝の境目で!なによりお肌にも悪い時間じゃない(笑)。

–若手選手が育ちにくいのは、練習が深夜になっていることも関係する?

(大ちゃん)そうだね、本人たちも学校に行くのが大変になるし、親御さんたちも深夜の送り迎え大変だから。自分も車の免許取ってから、ホッケーはじめたからね。車とパラの関連性は大きい。車椅子バスケ、ウィルチェアラグビー、我々、あと陸上もそうかな。みんなほぼ100%車使ってると思う。ということは、車がないとどうにもならない。環境が変わらないと、日本での若手育成は難しい。

–リンクの使用時間はどこでも同じ状況?

(大ちゃん)うん。日本全国にリンクがあるんだから、それをどう活用するかは一緒に考えていきたい。例えば地域のスケート教室を、たまにパラアイスホッケー教室にするとか。そうすると、障がいがあって運動会を見学している子達も主役になれるチャンスがあるし。

–大ちゃんはいつも、パラ競技は障がい者だけでなく健常者もできるから裾野が広いって言ってるよね。

(大ちゃん)そうなのよ。小学校の講演で車椅子バスケとかやると、みんな楽しんでくれるんだよね。だったら普段の体育にパラ競技も入れてもらいたい。そうしたらわざわざ自分がいかなくても、みんな日常的にパラに親しんでもらえるでしょ。

–僕は運動が苦手だけど、パラアイスホッケーを3試合見たらやってみたくなったよ。

(大ちゃん)運動が苦手だと、立ってスケートすると転倒が怖いでしょ?でもパラアイスホッケーなら体勢が低いし、転んでも「こてん」てなるだけなので安心だよ。ガチでやると格闘技みたいだけど、みんなが楽しめるいいスポーツなのよ。

 チーム内におけるメカニック、分析班不足。早朝練習という環境がもたらす若手育成の難しさ。様々な課題がパラリンピックを通じて改めて浮き彫りになる一方で、「課題発見こそが解決への一歩」と言わんばかりに猛スピードで動く大ちゃん。どんな状況でも前を向く彼の姿勢は、とても「アスリート的」だと思った。14日のノルウェー戦でも、変わらず前を向く姿に期待したい。

(文 澤田智洋)

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