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義足のウクライナ負傷兵が東京マラソンを走る理由/レース後のインタビュー掲載【東京マラソン2024】

ゴール直前、義足で力強く走るウクライナのカシュプルさん(撮影:越智貴雄)

 紛争で足を切断し義足を使用するウクライナの負傷兵、ロマン・カシュプルさんは、3日の東京マラソン2024に出場し、自身の記録を約1時間縮める4時間50分02秒(速報値)で完走した。

 2019年5月に地雷を踏み右足を切断したカシュプルさんは、2022年のロシア侵攻後には義足をつけて再び最前線に立ったという。

 カシュプルさんはこれまで、ロンドン・ニューヨーク・ブリュッセルマラソンに出場。東京マラソンも医療費を集めるプロジェクトの一環として参加し、ウクライナ負傷兵デニス・ドスージーの治療に必要な体内に埋め込む装置を購入する為の支援金を集めているという。

 ゴール後、カシュプルさんは、囲まれた報道陣にマラソンを走る思いを語ってくれた。

レース後のインタビューは以下の通り

銀座4丁目交差点を、義足で走るウクライナのカシュプルさん(撮影:越智貴雄)

──今日のレースについては?

今回の沿道の人々と雰囲気は素晴らしかったです。気持ちはさらに高まっていて、次のマラソンの準備をすぐに始めたいです。

──今回の記録についてどうでしたか?

今回は(ワールドメジャーマラソン)3回目のマラソン大会出場となります。記録は約1時間くらい更新できました。コーチとの練習で記録を更新できたけど、まだ満足していないです。もっともっと頑張りたいと思います。

銀座4丁目交差点を、義足で走るウクライナのカシュプルさん(撮影:越智貴雄)

──走っている時、何を考えていましたか?

妻と自分の子供たちのこと、そして支援のメッセージを送ってくれた軍隊の仲間のことが頭にありました。彼らの支援のおかげで走り切れたし、この結果になったと思います。1キロずつ、もっと頑張ろう、もっと頑張ろうと走り続けて完走出来ました。

──マラソンコースの中で1番印象に残っている場所や場面はありますか?

東京の街の声援が素晴らしかったです。1番印象に残ったのは、走っている時に、沿道に支援してくれた人が多く来てくれて、その中で日本の方が「ウクライナに栄光あれ」とウクライナ語で声援をかけてくれたのが、とても嬉しかったです。東京をとても気に入ったので、また必ず来たいと思います。

ゴール後、ウクライナ旗を手に笑顔のカシュプルさん(撮影:越智貴雄)

──怪我をした兵士のために走っているということですがこのプロジェクトを通してどういう結果になって欲しいですか?

すごい結果が出せたと思います。メディアにとても注目されて、このプロジェクトについて知ってもらう機会が作れました。

──今後の活動としてどういうふうに考えていますか?

負傷者の支援を引き続き行います。マラソンはさらに記録を更新するために努力します。次は4時間を切りたいです。

完走メダルを受け取るカシュプルさん(撮影:越智貴雄)

──ウクライナのことを伝えるには色々方法があったと思うのですが、なぜマラソンを選んだのですか?

今までの人生で、ずっとスポーツをやっていたので、負傷してもスポーツを辞める気は全くありませんでした。ウクライナで負傷した方々の為と、戦っている方々のモチベーションを上げるという目的で、まずは、自分が良い事例になろうと思いました。人生はフルで生きるべきで、フルで活躍することを見せたかったからです。そして、スポーツは精神的な復活の重要な一部にもなりますし、今後もずっと続けていきたいです。

──履いている義足については?

アイスランドにある義肢装具パーツメーカーのオズール社が、ウクライナのアンバサダーに私を起用してくれて、義足のサポートをしてもらっています。義足をつけて走る事で、これからも目標をさらに設定して、人生がもっと面白くなる、熱くなると思っています。

東京マラソン2024をゴールするカシュプルさん(撮影:越智貴雄)

──パラリンピックへの出場は?

将来的にパラリンピックにも出るかもしれないです。その可能性があれば出場したいです。

記事:越智貴雄

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