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国枝慎吾シングルス3連覇ならず、ダブルスは3位決定戦へ リオパラリンピック

ボールを追いかける国枝慎吾=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

ボールを追いかける国枝慎吾=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

 この日のリオには朝から強い熱風が吹いていた。午後12時の気温は32度。車いすテニスの男子準々決勝を迎えたすり鉢状のセンターコートには気まぐれな風が巻き、蒸せ返るような照り返しと肌を刺す太陽の日差しが選手たちの体力を奪う。
 パラリンピックのシングルス3連覇を期待された国枝慎吾(ユニクロ)は13日、ベスト4入りをかけた一戦で世界ランキング2位のヨアキム・ジェラール(ベルギー)と対戦。最速150km/hを超えるビッグサーバーを相手に苦戦を強いられ、3-6、3-6のストレート負けを喫した。この瞬間、偉業達成の夢はついえた。

「第1セットから最後まで、相手のパフォーマンスのほうが上回っていた」と試合を振り返る国枝は、今大会を通じてついに試合勘が戻らず、初戦から苦労していたと明かす。今年4月に手術した右肘は問題なかったようだが、術後、試合数をこなせていなかったことが精神面での不安につながった。
 ただ、「試合感が戻ったとしても、今日の彼に勝てたかどうかはわからない」とも。確かにジェラールは調子の上がらない国枝を終始圧倒し、ゲームの主導権を握った。とりわけ武器のサーブが冴えた。風が強いことや球足が遅くなる重たいサーフェースはジェラールのサーブの威力を奪うかとも思われたが、「風は関係なく、いいサーブが入っていた。あのサーブを攻略しない限り、こちらのペースにはならなかった」と国枝は話している。

サーブを打つ国枝慎吾=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

サーブを打つ国枝慎吾=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)

完敗を認める国枝、周囲のサポートには感謝

 試合の立ち上がりは悪くなかった。しかし、時折吹く突風で試合が三度中断。そこで集中力を切らす国枝ではなかったが、ボールコントロールが狂ってミスになったり、コースが甘くなったりして、ジェラールにチャンスボールを与えた。国枝も「そこを見逃してはくれなかった」と言うように、ジェラールは4ゲーム目をブレークしたのを潮にたたみかけるような攻撃で国枝から第1ゲームを奪うと、続く第2セットも7ゲーム目まで互いにキープしたものの、先に流れを変えたジェラールが、得意のバックハンドのダウンザラインなどで反撃に出てきた国枝をものともせず、8、9ゲーム目を連取してストレート勝ちを収めた。

「競ってはいたが、どうしてもこちらの流れに持ってこられなかった。どこがターニングポイントというよりも、根本的なところで力負けした。ストローク戦で負けないことが勝つための第一条件だったのに、それができず完敗だった」
 そう負けを認める国枝はリオパラリンピックを迎えるにあたり、かつてないほどの重圧に苛まれていた。特に前年の2015年シーズンは調子が良かっただけに、「昨年がパラリンピックイヤーだったら」と思うこともあったそうだ。
 その苦しさはリオに入ってからも続き、試合後は不安を払拭するため、すぐに練習コートに立ち本来の自分を取り戻そうとした。また、名コンビの丸山弘道コーチにもしきりにアドバイスを求めた。「丸山コーチにもストレスをかけ過ぎてしまったかも」と国枝。
「本当に苦しい一年でコーチやトレーナー、ドクターや家族に迷惑をかけた。多くの人を振り回して、この舞台に立てた。そのことに感謝の気持ちしかない」と話している。

サーブをする国枝慎吾=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄) ダブルスでメダルを狙う、3位決定戦は日本人対決  国枝はシングルスを落とした数時間後、同じセンターコートで斎田悟司(シグマクシス)とのダブルス準決勝に臨んだ。体力の回復と気持ちの切り替えが難しい状況下で、今年の全英オープンを制した実力派アルフィー・ヒューイットとゴードン・リード(ともに英国)ペアに6-2、6-4のストレート負け。

サーブをする国枝慎吾=リオパラリンピック(撮影:越智貴雄)
ダブルスでメダルを狙う、3位決定戦は日本人対決
 国枝はシングルスを落とした数時間後、同じセンターコートで斎田悟司(シグマクシス)とのダブルス準決勝に臨んだ。体力の回復と気持ちの切り替えが難しい状況下で、今年の全英オープンを制した実力派アルフィー・ヒューイットとゴードン・リード(ともに英国)ペアに6-2、6-4のストレート負け。

ダブルスでメダルを狙う、3位決定戦は日本人対決

 国枝はシングルスを落とした数時間後、同じセンターコートで斎田悟司(シグマクシス)とのダブルス準決勝に臨んだ。体力の回復と気持ちの切り替えが難しい状況下で、今年の全英オープンを制した実力派アルフィー・ヒューイットとゴードン・リード(ともに英国)ペアに6-2、6-4のストレート負け。国枝・斎田は15日に行われる3位決定戦に回った。シングルスで負けてしまった以上、ダブルスのメダル獲得への思いはことさらに強い。
 タイトな試合日程でフィジカル面のタフさが要求されているが、国枝は「ダブルスがあったおかげで1試合でも経験を多く積めたのは、自分にとってすごくポジティブ」と言っており、ダブルスがシングルスの負担になることはなかったという。
 国枝・斎田ペアは2004年アテネ大会で金メダル、2008年北京大会で銅メダルに輝いた実績を持つ。その二人の対戦相手は、なんと日本の三木拓也(トヨタ自動車株)・眞田卓(吉田記念テニス研修センター)ペア。銅メダル決定戦は奇しくも日本人対決となったが、ベテランと伸び盛りの若手の対決はリオパラリンピック後を占う意味でも楽しみな一戦だ。

(文・高樹ミナ)

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