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パラコラム

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「パラ友1人できるかな」 -親友がパラリンピックに出るそうで-

長年付き合いのある上原大祐選手(右)と澤田記者(撮影:越智貴雄)

 パラアイスホッケー日本代表は16日にスウェーデンと対戦し、1-5で敗れた。これで全日程が終了となり、日本は8位で平昌パラリンピックを終えた。厳しい大会となったが、上原大祐選手(以後:大ちゃん)は、ダイナミックなドリブル、細かなパックコントロール、最後まで諦めない気迫でチームを牽引した。

 私は、大ちゃんと友達だからこそパラリンピックへの興味が湧き、この度ライターとして平昌パラリンピックに参加させて頂いた。このご縁がなければ、冬季パラリンピック開幕式の凍てつく寒さも、チェアスキーの目にもとまらぬ速さ(時速100km以上を超える)も、視覚障害者クロスカントリー選手と伴走者との神業のような一体感も、味わうことはなかっただろう。しかし、大ちゃんから平昌のご縁を頂いたのは私だけではない。会社仲間、友人など、総勢20人以上が大ちゃんのプレイを見に韓国まで来ていた。また、日本でも大勢の人が、パラアイスホッケーの中継を見ながら、大ちゃんに声援を送っていたそうだ。それは、多くの人にとって大ちゃんが大切な「パラ友」だからだ。友人がパラリンピックという大舞台に出ると聞けば、遠かったパラが一気に自分ごとになる。

 大ちゃんは、子どもに話をするときにはこう切り出す。「上原大祐です、今度パラリンピックに出ます。もしパラに出る人が、知らない人と、お友達だったら、どっちを応援したいですか?」「お友達!」「じゃ今日はお友達になりにきたので、大ちゃんって呼んでください。せーの!」「だいちゃーん!」。歌のお兄さん顔負けのつかみである。彼は積極的に、みんなのパラ友になり続けてきたのだ。

 「上原さんと関わるようになって段差が気になるようになった、自社の技術で何が解決できるかなと考えるようになった、という人が増えた」と大ちゃんは言う。つまり、パラ友との繋がりは、パラリンピックへの興味を持つだけに留まらず、「自分の友達にとって、より良い社会って何だろう」を自然と考えることになる。いわゆる「心のバリアフリー」とでも言うのだろうか。例えば障害者等用駐車場は、そのスペース数が限られているのにも関わらず、いわゆる健常者と言われる人が駐車していることも多い。それに対し、張り紙などで注意喚起するだけではみんなの意識はなかなか変わらない。ところが、車いすのパラ友から「また例のスペース、健常者が止めてて、空くまで30分待ったんだよ!待ちくたびれた!」という話を聞けば、もう二度と障害者用等用駐車場に不必要に車は止めないだろう。

 だからこそパラリンピック選手は、できるだけ多くの人に会うことが大事だと大ちゃんは言う。協会やJPC、組織委員会に集客や広報を一任するのではなく、選手自らが動くことが、大きな変化につながる。講演だけでなく、ときには自分のスポーツを通じて交流を図ってもいい。お互いが歩み寄ってこそ、友情関係は成立する。

 2020年の東京オリンピック・バラリンピック。大会の盛り上がり・成功に加え、ポスト2020に何を残せるかが大事だ。私は、パラリンピック選手との友情関係が、ひとつのレガシーになると確信した。2020年が終わっても、友人がパラに何らか関与しているかぎりは、私たちも引き続き応援するだろう。「ともだち100人できるかな」は、「一年生になったら」という歌の有名なフレーズである。100人でなくてもいい。2020年までに1人でいいから、パラ友をつくろう。それはきっと、あなたの人生に思わぬ変化をもたらし、その集積が日本にも前向きな変化をもたらすだろう。

(文 澤田智洋)

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