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鈴木亜弥子、「課題」と「手応え」を感じた準優勝 パラバドミントン世界選手権2019

準優勝の鈴木(撮影:越智貴雄)

 25日、パラバドミントン世界選手権(スイス・バーゼル)の決勝が行われ、前回覇者の鈴木亜弥子(七十七銀行)が楊秋霞(中国)にゲームカウント1-2で敗れ、前回大会に続く連覇とはならなかった。第1ゲームを0-6の劣勢な状況から逆転で先取した鈴木だったが、逆に前半リードした第2ゲームは後半に逆転されて1-1と並ばれてしまう。第3ゲームは一度もリードを奪うことができずに、そのまま敗れた。これで最大のライバルとの通算での対戦成績は2勝5敗となった。

第2ゲームの後半に感じた疲労

 史上初めて健常のバドミントンとパラバドミントンの同時開催となった今回の世界選手権。鈴木のファイナル・ゲームは今大会、自身初のメインホールでの試合となった。しかし、これが鈴木の感覚を鈍らせた。

「お互いに初めてのコートだったので、まずはいろいろとやってみて、空間をつかもうと思っていました」と鈴木。その第1ゲーム、相手からのサーブに対し、鈴木はアウトと思い、見誤ってしまう。これがサービスラインぎりぎりに入り、楊に先取点が入った。実はこの試合、“見誤り”での失点が何度かあった鈴木。その理由をこう明かしてくれた。

「あんなに大きな会場でやるのは初めてで、最後までなかなか空間感覚がつかめず、アウトかなと思ったら入っていた、という感じでした」

 意外なかたちで先取点を取った楊は、勢いに乗った。深いショットを打ち、鈴木を後方へ下げると、そこにできたオープンコートに角度あるショットを打ち込むなど揚は次々と得点を奪い、気づけば鈴木は0-6と大きなビハインドを負った。

しかし、この劣勢な場面にも、「まだ試合は始まったばかりだったので」と、鈴木は弱気になることなく集中し、少しずつ挽回していった。そして、ついに14-14と並ぶと、そこからじりじりと引き離すかたちで21-17で第1ゲームを先取した。

 しかし、鈴木は気もちを緩めず気を引き締めていた。
「楊さんはいつもファースト・ゲームを落としても、結局はファイナルを取ってしまう強さがある。なので、まったく安心はしていませんでした」

 続く第2ゲーム、楊は前半ミスが多く、集中力を切らしかけていたかのようなしぐさを見せていた。一方、鈴木は相手のミスを誘う巧みなプレーでリードを奪った。しかし、11点目を取り、インターバルの直後から自分の体が疲労していることを感じていたという。逆に楊はインターバルを機にギアを上げ、徐々に試合の流れを引き寄せていった。鈴木は12-12と並ばれると、そのまま楊にリードを奪われ、17-21でこのゲームを落とした。

 第2ゲームがこの試合の「最大のポイントだった」と鈴木。最後の第3ゲームは序盤にリードを奪われ、そのまま一度も並ぶことができずに15-21で落とした。

ライバルがいてこそ目指す高み

 2年前、鈴木は「JAPANパラバドミントン国際大会」の決勝で楊から初勝利を挙げると、その2カ月後の世界選手権でも決勝で勝利し、優勝を果たしている。しかし、それ以降は3連敗と、昨年から一度も勝てていない。果たして、2年前と今とでは、何が違うのか。

「一昨年、私に敗れたのを機に、楊さんはより私に対して『絶対に勝つぞ』という強い気持ちで向かってくるようになったかなと感じています。さらに、前回の世界選手権以来の対戦となった昨年の大会で会った時に体つきが違っていたんです。よりアスリートっぽくなっていて、きちんとフィジカルトレーニングをしているんだなと思いました。プレー自体、打つコースも以前のように単純ではなくなっていますし、守備範囲も広がっていて、粘り強さも出てきました」

 そんなライバルに対し、「終盤に自分が多くミスをするということは、もっとフットワークを磨いていかなければいけないということ」と反省点を口にした鈴木。それでも「今年4月のドバイでの国際大会ではストレート負けしましたが、今回はファイナルまで持ち込むことができました。その時よりはフットワークも良くなってきていると感じています」と手応えもあったという。

 試合後の会見では、お互いに微笑み合うシーンも見せ、楊が鈴木に対して「尊敬している」と語るなど、お互いにいいライバル関係を築いている二人。実は鈴木も楊も、ほかの選手には負けたことがない。刺激し合えるライバルがいるからこそ、「私自身も高みを目指せる」と鈴木は語る。

 奇しくもファイナルがあった8月25日は、東京パラリンピック開幕の1年前。鈴木にとっても目指している“特別な大会”だが、「焦りはまったく感じていない」と鈴木。その背景には、信頼するコーチの存在がある。

「もし一人だったら、焦っているかもしれません。でも、コーチから客観的な目でいろいろとアドバイスをもらって、具体的な練習メニューを組むことができている。あとはやることをやるだけだと思っています」

 ちょうど1年後に幕を開ける東京パラリンピック。初めて正式競技として実施されるパラバドミントンで繰り広げられる“ライバル対決”に注目だ。

(文・斎藤寿子)

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