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競技レポート

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日本、「2020での金メダル」に向けた銅メダル 車いすラグビーワールドチャレンジ2019

試合終了後、笑顔を見せるチームキャプテンの池(右)と島川(撮影:越智貴雄)

 20日、世界の強豪8カ国が集結した「車いすラグビーワールドチャレンジ」は最終日を迎えた。昨年の世界選手権覇者で現在世界ランキング2位の日本は、3位決定戦で同4位のイギリスと対戦。第1ピリオドで1点をリードすると、最後は5点差に広げ、54-49と今大会を勝利で終えた。

ミスをカバーして流れを引き寄せた日本の好守備

試合の初トライを決めた池崎(撮影:越智貴雄)

「今日、選手たちは持っているすべての力を出して戦ってくれた。日本は実力を発揮すれば、どのチームにも勝てる力を持っている。今日はそれができたゲームだったと思う」

 試合後、ケビン・オアーHCはそう言って、選手たちを称えた。

 前日の準決勝ではオーストラリアに1点差で敗れ、金メダルを逃したことに悔しさをにじませていた日本。だからこそ、この試合は勝つことが使命となっていた。その強い気持ちは、第1ピリオドからコート上で表れていた。

 ティップオフを制し、敵陣に攻め込んだ日本。キーエリアで待つ池透暢に池崎大輔がパスをした。しかし、これが相手にカットされ、最終的には池の手に触れたボールはコート外へ。ターンオーバーでイギリスボールとなってしまう。

 この試合開始早々のミスに、流れがイギリスへと傾くかに思われた。しかし、すぐに気持ちを切り替えての日本の好守備に、イギリスはパスコースが見出せずに時間が経過。無理にコート上にロングパスを投じるも、味方がボールに触れる前に10秒が経過し、ペナルティに。これで再び日本ボールとなり、試合は振り出しに戻るかたちとなった。

 その直後、池崎がこの試合の初トライを決めると、すぐに日本は守備に転じ、厳しいプレッシャーをかけた。この日本の好守備に、イギリスは12秒以内にハーフラインを越えることができず、再び日本ボールに。池崎が2つ目のトライを決めて、早くも2点のリードを奪った。

 ミスを引きずることなく、コート上の4人全員が気持ちを切り替えて献身的な守備で嫌な流れを払拭した日本。勝利への執念が相手のミスを誘い、流れを引き寄せる要因となっているように感じられた。

連続の好プレーで示された「金メダル宣言」

試合後、日本チームはエンジンを組み、チームキャプテンの池が選手たちに声をかけた(撮影:越智貴雄)

 日本は第2ピリオドで3点差とすると、第3ピリオドもそのリードを守り、最終ピリオドを迎えた。最後の8分間、会場に詰め掛けた大勢のファンへの感謝の気持ちを示すかのような好プレーが続いた。

 まず、観客を魅了したのは、チーム最多となる4大会連続でパラリンピックに出場している島川慎一だ。相手の強いタックルを受け、転倒しながらも池崎にパス。現在開催されているラグビーワールドカップで史上初の決勝トーナメント進出を決めたラグビー日本代表の「オフロードパス」さながらのプレーに、スタンドからは驚嘆する声が飛び交った。さらに池崎がキーエリア付近に走りこんでいた乗松聖矢にパスをつなぎ、トライ。45-41とリードを4点に広げた。

 次に好プレーで相手の得点を防いだのが、持ち点1.0のローポインター若山英史だ。キーエリアに走りこみ、味方のパスを受けてトライを狙おうとする相手エースのジム・ロバーツを車いすの前部に取り付けられたバンパーで止めた。このプレーで動きが遅れたロバーツより先に池が相手のキーエリアに走りこんでボールを奪い、すぐさまロングパスで得点に結びつけた。

 そして最後は、「ONE TEAM」の姿だ。残り16秒で島川がトライを決め、これで54-49。日本の勝利はもう確実のものとなっていた。だが、日本は最後まで戦う姿勢を貫いた。疲弊しきった体に鞭をうつかのように、16秒間、機敏な動きで相手の進路を塞ぎ、ボールマンに猛アタック。コート上の4人だけでなく、ベンチメンバーも声でチームメイトを鼓舞し続けた。そして、イギリスに最後のトライを許すことなく守り切ったのだ。

 試合後の勝利インタビューで、キャプテンの池は声援を送り続けてくれた観客に向かって、こう宣言した。
「自分たちは決して銅メダルで満足はしていません。でも、多くの方が待ち望んでいるんだということを認識して、強い気持ちでこの試合に臨みました。来年の東京では、金メダルという結果で泣かせたいと思います!」

 その強い気持ちが、しっかりとプレーに表れ、その集大成が最後の好守備だったに違いない。

 日本が進出することができなかった決勝は、世界ランキング1位のオーストラリアが同3位のアメリカに51-59という大差で敗れるという波乱が起きた。前日の準決勝では、いずれの試合も1点差の接戦だったことを考えれば、オーストラリア、アメリカ、イギリス、そして日本は今、どこが勝ってもおかしくはない“四つ巴”の様相を呈していると言える。

 そんな混戦模様の中、日本は頭一つ抜け出し、「金メダルを確実に獲れるチーム」へと変貌を遂げて2020年を迎えるつもりだ。“ケビン・ジャパン”はまだまだ強くなる。今大会の銅メダルは、それを確信させるものとなったに違いない。

(文・斎藤寿子)

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