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男子は洞ノ上、女子は土田がリオ切符! 東京マラソン2016

(左から)ゴール後、ガッツポーズを見せた洞ノ上と表彰式で笑顔の土田(撮影:越智貴雄)

(左から)ゴール後、ガッツポーズを見せた洞ノ上と表彰式で笑顔の土田(撮影:越智貴雄)

 28日、「東京マラソン2016」が行われ、今大会初めて国際化し、リオデジャネイロパラリンピックの選考となった車いすレースでは、男子は洞ノ上浩太が1時間26分01秒で日本人トップの3位、女子は土田和歌子が1時間41分04秒で9連覇を達成。洞ノ上、土田はともにリオ推薦内定が決定した。

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予想通りの高速レースに

「ホッとしました」
 レース後、何度もその言葉を口にした洞ノ上。その表情からも、安堵の気持ちを伺い知ることができた。

 今大会、リオの内定を決めるには3つの条件があった。「1時間28分30秒以内」「日本人トップ」「総合3位以内」である。その中で、洞ノ上は「1時間28分30秒以内」というタイムについては、頭から外したという。

「自分は色々なことを考えると、力が発揮できないタイプ。だから、条件については2つに絞りました。タイムについては、外国人選手といい争いができれば、必ずついてくるという確信があったんです」

 9時05分、青空の下、号砲とともに車いすの部がスタート。すると、選手の誰もが予想していた通り、例年以上に速いペースでレースが展開。ベテランの洞ノ上や副島正純などの日本人がローテーションをしながら、先頭集団を引っ張っていった。

 14キロ地点で、先頭の副島がアタックを仕掛けると、それについていったのが西田宗城。昨年11月の大分国際車いすマラソンで日本人3位に入る好走を見せた若手の1人だ。今大会でも積極的な走りを見せていた。一時はその2人に後続が離れかけるも、すぐに追いつき、再びローテーションしながらの展開に戻った。

力走する洞ノ上浩太(撮影:越智貴雄)

力走する洞ノ上浩太(撮影:越智貴雄)

 25キロを過ぎると、集団の後方にいた洞ノ上が、前方へポジションを取り、ローテーションに加わり始めた。そして、終盤に入った30キロ地点で先頭集団は6人。外国人2人に加えて、洞ノ上、副島、西田、そして21歳の大学生ランナー・鈴木朋樹の日本人4人となっていた。

 その後、誰かがアタックを仕掛けるたびに、集団がばらけるも、しばらくすると後続が追いつき、6人の集団はなかなか崩れることはなかった。

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洞ノ上、ゴール手前の駆け引きに成功

 しかし、アップダウンが始まる35キロ過ぎ、洞ノ上がスピードを上げると、上り坂がやや苦手な西田が遅れをとり、集団から抜け落ちてしまう。これで、日本人トップ争いは3人に絞られた。

力走する大学生ランナーの鈴木朋樹(撮影:越智貴雄)

力走する大学生ランナーの鈴木朋樹(撮影:越智貴雄)

 40キロを過ぎたところで、鈴木が先頭を走り始めた。その表情は落ち着き払い、疲労はまったく感じられなかった。実際、鈴木に疲労感はなかったという。彼にとってのメイン種目は中距離で、今大会ではリオの内定は特に狙ってはいなかったが、この時は自分が先頭にいることを意識し、「もしかしたらいけるかもしれない」という気持ちが芽生えていた。ところが、41キロ地点の最後の上り坂で、鈴木はあっという間に後続に抜かれ、引き離されてしまった。

「最後に上りがあることをすっかり忘れていたんです。だから、上りに気づいた時に『あれっ』と驚きました。そしたら、後ろからものすごい勢いで行かれて、(スピードアップする)タイミングが遅れてしまいました」
こうして日本人トップ争いは、洞ノ上と副島のベテラン2人に絞られた。

 今回、ゴールの手前には、広い道路から歩道に上がって狭いスペースを抜け、2つのカーブがある。洞ノ上はその狭いスペースに先頭で入らなければ、優勝の可能性は少ないと考えていた。そして、広い道路の最後で先頭の副島を抜き、トップで狭いスペースに入ることに成功した。しかし、最後のカーブと直線で2人の外国人選手に抜かれた。それでも日本人トップの3位でゴールテープを切り、リオへの推薦内定を決めた。

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女子は土田が最後に逆転で9連覇

 一方、女子はスタートからタチアナ・マクファーデン(アメリカ)と、土田の2人旅となった。ともにローテーションを繰り返しながら、どちらもペースを落とすことなく走り続け、優勝の行方は最後までもつれ込むかと思われた。

 そんな中、土田が「ここしか勝負どころがなかった」という41キロ付近、最後の下りで、マクファーデンの後ろにピタリと付いていた土田が一気にスピードアップ。これにマクファーデンは反応することができず、徐々にその差が開いていった。そのまま、土田はトップでゴール。弾ける笑顔でガッツポーズをし、駆け寄ってきた9歳の息子と抱き合った。

 これで、リオの車いすマラソンに推薦内定したのは、男子は昨年の大分で日本人トップとなった山本浩之に続き、洞ノ上が2人目。女子は土田が初めてとなった。

(文:斎藤寿子)

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