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初の東京開催、初代王者の座は米国代表の手に!車椅子ソフトボール

決勝戦、米国代表が、北九州シルバーウィングスに10-3で大勝し、初代王者に輝いた(撮影:越智貴雄)

 東京初の車椅子ソフトボール大会として開催された「中外製薬2017車椅子ソフトボール大会in東京」(東京臨海広域防災公園特設会場)。2日目の8日は、前日に続いて行なわれた予選リーグの結果に従って決勝トーナメントが行なわれ、強敵揃いのディビジョン1では米国代表が、北九州シルバーウィングスに11-3で大勝し、初代王者に輝いた。

決勝戦で登板した北九州シルバーウィングスのサウスポー上田聖也(撮影:越智貴雄)

予選で温存した左のエース

「今年は、春からずっと、『打倒・米国』と銘打って練習をしてきました」
 そう語ったのは、北九州シルバーウィングスを率いる山本浩二監督だ。

 昨年7月、全日本選手権に初参加した米国代表との試合、中盤までは同点と、まさに手に汗握る試合を繰り広げたが、終盤に引き離され、北九州は敗れた。その雪辱を果たそうと、今年は春から米国対策を練ってきたのだ。

 今年7月に行なわれた全日本選手権、北九州は2チームが参加し、見事にワンツーフィニッシュを達成した。特に優勝したチームは、サウスポーの上田聖也が快投を披露。打者の真正面から投げるのではなく、極端にピッチャープレートの左端から投げることで、右打者の内角に食い込むクロスボールが、他チームの打者を苦しめたのだ。全日本で手応えをつかんだことで、上田のピッチングが米国対策の大きな武器になるとにらんでいた。

 そこでこの日、北九州は米国との予選リーグ最終戦で上田を温存した。順当に行けば、決勝で再び米国と顔を合わせるとにらみ、上田を「秘密兵器」としたのだ。その結果、米国が予選リーグを全勝で1位通過し、北九州は2位で決勝トーナメントを迎えた。

 そして、準決勝では北九州は埼玉A.S.ライオンズを、米国はTOKYO LEGEND FELLOWSをそれぞれ破り、決勝に進出。大会前の下馬評通りのカードとなった。

大会期間中、好投をみせたアメリカ代表投手(撮影:越智貴雄)

米国の猛攻で、まさかの初回大量失点

 決勝で満を持してマウンドに上がった上田。ところが、その初回、誰もが予想だにしなかった展開が繰り広げられた。先頭打者を内野のミスで出塁させると、二者連続となるエンタイトルツーベースで2失点を喫した。そして極めつけは、エースで4番のジェフリー・ヤックリーに安打、5番のジョー・ラマーを四球で出し、無死満塁の場面だった。昨年、初参加した全日本でMVPに輝いたブレンドン・ダウンズに、片手打ちで上田のボールは軽々と外野へ運ばれた。ダウンズは、スピードを落とすことなくダイヤモンドを駆け抜け、一気にホームへ。満塁ランニングホームランとなり、米国は一挙4点を追加し、リードを6点に広げた。

 さらに2回裏、上田は2死無走者から再び二者連続でのエンタイトルツーベースを打たれると、続く4番のヤックリーに一発を浴び、この回3失点。試合は予想外の序盤でのワンサイドゲームとなった。

 それでも、3、4回を無失点で切り抜けると、5回表、北九州は1死二塁から8番の佐藤春樹の内野ゴロに飛び出した二塁走者の下川友暉が三塁へ突っ込み、さらに内野の守備が乱れている間にホームへ返り、待望の1点が入った。そして、下川がホームを狙う間に打者佐藤は三進し、なおも1死三塁とした。すると、9番の平田眞一は投ゴロに倒れるも、相手投手のヤックリーが平田にタッチにいく隙をついて、佐藤がホームを狙った。これにすぐさまヤックリーが反応し、ホームにバックトスを試みるも、これが大きくそれてしまい、佐藤が2点目のホームを踏んだ。

北九州シルバーウィングス、反撃をみせるも追い上げるまでには至らなかった(撮影:越智貴雄)

 しかし、やはり初回の大量失点が最後まで大きく響いた。北九州は6回表にも1点を追加したものの、追い上げるまでには至らず、結局3-11で敗れた。

 予選リーグ3試合、準決勝、決勝、そして日米戦と全6試合を勝利で飾った米国。発祥の地であり、半世紀前から全米選手権(2014年からは「ワールドシリーズ」に名称変更)が行なわれるなど、車椅子ソフトボールのパイオニアの強さは、やはり偉大だった。

 しかし、本格的な普及活動が始まって、わずか5年目と考えれば、日本の車椅子ソフトボールの成長スピードは決して遅くはないはずだ。

 果たして、米国に「初勝利」を挙げる日はいつ訪れるのか。そして、それはどのチームとなるのか。歴史的快挙を見られる日が待ち遠しい。

(文・斎藤寿子)

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