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日本発の新スポーツに世界が注目!──みんなの常識を変える「ゆるスポーツ」の魅力とは

開会式では参加者全員でゆる~く準備体操(撮影:越智貴雄)

開会式では参加者全員でゆる~く準備体操(撮影:越智貴雄)

 年齢や性別に関係なく、運動オンチの人も大歓迎。参加すれば誰でも楽しめ、笑顔になる「ゆるスポーツ」が広がっている。キャッチコピーは「スポーツ弱者を、世界からなくす」。考案されたスポーツはすでに50種類以上。高齢者や障害者をケアする福祉団体のほか、地方の特色を盛り込んだ「ご当地ゆるスポ」も開発されている。日本発の新競技が、これまでのスポーツの概念を変えている。

篠原信一さんが実演した「アフレルアフロ」(撮影:越智貴雄)

篠原信一さんが実演した「アフレルアフロ」(撮影:越智貴雄)

 5月14日、東京都江東区で開かれた「ゆるスポーツ運動会 2017」に、約250人の参加者が集まった。昨年に続き2回目の開催で、人気の高まりから4月中旬に売り出した入場券は2週間ほどで完売した。
 この日に体験できたのは18種目。新種目として発表された「アフレルアフロ」は玉入れのような競技だ。頭のてっぺんに穴が空いているアフロヘアの「親アフロ」のカツラをかぶり、そこに向けて小さな球の「子アフロ」を投げ入れる。元柔道選手でタレントの篠原信一さんがプレゼンターとして真っ白なアフロヘアをかぶって実演すると、コミカルな動きに会場に笑いが沸き起こった。

子供から老人まで楽しめる「トントンボイス相撲」(撮影:越智貴雄)

子供から老人まで楽しめる「トントンボイス相撲」(撮影:越智貴雄)

 人気種目の「トントンボイス相撲」は、見た目は紙相撲だが、指で土俵を叩くのではなく「トントン」という声を出す。その音に機械が反応し、土俵が振動する。食べ物を飲み込む力の弱くなった高齢者のリハビリを目的に、遊びながら喉の運動ができる競技として考えられた。

「イモムシラグビー」は見た目より体力を使うハードな競技(撮影:越智貴雄)

「イモムシラグビー」は見た目より体力を使うハードな競技(撮影:越智貴雄)

笑いが絶えず誰でも楽しめる「ゆるスポーツ」

 ゆるスポーツは、観る人を楽しませる面白いネーミングとユニークなコスチュームが特徴。また、一般的なスポーツのように健常者を中心にしたルール作りをしない。
 「イモムシラグビー」は、袋状のイモムシウェアを着用することで下半身を使えない状態にする。5人1組のチームでトライを目指すが、ほふく前進で前に進む人がいたり、横に転がって左右に展開したり。フィールドのイモムシたちが一生懸命に動く様子がどこか滑稽で、選手も観客も笑いが絶えない。
 一方で驚きも広がる。イモムシ状では移動に上半身しか使えないので、体格のいい男性よりも、体重の軽い女性や子どもの方が動きがいい。下半身マヒの障害者が参加すると、普段の生活では上半身だけで移動しているので、スピードは群を抜く。トライを決めるたびに、選手や観客から「すごい!」という驚きの声が上がった。
 この日、イモムシラグビーをはじめて体験した30代の男性は、「身体の一部を制限するだけで、老若男女や年齢、障害の有無に関係なくみんなが一緒にスポーツを楽しめる。次もまた参加したい」と話す。

世界ゆるスポーツ協会代表理事の澤田智洋さん(撮影:越智貴雄)

世界ゆるスポーツ協会代表理事の澤田智洋さん(撮影:越智貴雄)

 イベントを主催した一般社団法人「世界ゆるスポーツ協会」が設立されたのは2016年4月。代表の澤田智洋さんは、自分自身を「運動音痴でスポーツが大嫌いだった」という。幼い息子が視覚障害なこともあり、「スポーツ弱者をなくそう」と考えて、ゆるスポーツ作りを始めた。澤田さんは言う。
「イベントに参加してくれた知的障害のお子さんを持つお母さんから、『子供が健常者と一緒にスポーツをして、しかも勝つことができてとても喜んでいました』と話してくれました。スポーツの力はすごいと思う。ただ、スポーツ弱者をなくすためには、まだまだ種目数が足りません。いろんな人の状況に合わせて、1000種目はつくりたい」
 ゆるスポーツの原点は「勝ってうれしい、負けて楽しい」。東京オリンピック・パラリンピックがある2020年に「ゆる五輪」の開催も目指している。この日のイベントには、海外の通信社や中東・アフリカ地域に番組を放映しているカタールのテレビ局なども取材に訪れた。日本発の新スポーツが、世界から注目を集めている。

取材・文:土佐豪史

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