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競技レポート

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初出場18歳の山口、世界新で東京内定第一号! パ ラ競泳世界選手権2019

男子100m平泳ぎ(SB14=知的障がい)決勝で世界新記録を出した山口(撮影:越智貴雄)

 ロンドンで開催されているパラ競泳の世界選手権。大会3日目の11日夕方(日本時間12日未明)、男子100m平泳ぎ(SB14=知的障がい)で山口尚秀が今大会日本人初の金メダルを獲得し、来年の東京パラリンピック競泳日本人内定第一号となった。

前半から飛ばした積極さが勝因に

表彰式で笑顔の山口(中央)(撮影:越智貴雄)

 予選のレース後、「世界記録を樹立して優勝できたらいいなと思います」そう語っていた山口。まさに有言実行の泳ぎを披露した。

 前日の背泳ぎでは予選落ちと悔しい結果に終わった山口は「昨日の悔しさをぶつけていこうと思った」と前半から飛ばし、トップで50mのターンを折り返した。

「ピッチもそれほど速すぎることもなく、ワンストローク、ワンキック、一つ一つのテンポをしっかりと大事にして泳げた」と前半を振り返った山口。しかし、隣のレーンを泳ぐイギリス人選手がすぐ後ろに迫っていた。2人の壮絶なデッドヒートが繰り広げられた結果、軍配が上がったのはイギリス人選手。山口はわずか0.08秒差で2位。それでも1分5秒46の好タイムを叩き出し予選全体で2位となった。競泳日本代表キャプテンの鈴木孝幸も「朝から調子がよさそうだった」と語り、今大会日本選手団としては初の金メダルへの期待が寄せられた。

 そして現地時間18時半過ぎに始まった決勝では、予選以上の思い切りの良さを見せ、出だしから頭一つ抜けてトップに躍り出た。その勢いは止まらず、50mのターンでは2位の選手に1秒07の差をつけ、体ひとつ分リードした。

 終盤には予選でトップとなったイギリス人選手が地元ファンからの大声援に押されるようにして猛追するも、前半でのリードが効き、山口はトップの座を死守してゴールした。

「地道な練習でもやること」で得た金メダル

ゴール後、手をあわせ「ありがとう!ありがとう!」と声をあげた山口(撮影:越智貴雄)

 電光掲示板を確認し、自分がトップでゴールしたことを知ると、両手をあわせて「ありがとう!ありがとう!」と声をあげた山口。その時の気持ちについて「パラ競泳をつくってくれた人や、この大会を用意してくれた関係者や審判など多くの皆さんに感謝しています」と語った。

「もちろん苦手な練習もあるけれど、得意なことも苦手なこともしっかりとやっていかないと(勝つのは)難しい。本当に地道な練習でもしっかりとやることで、こういう結果が得られるんだなと感じています。東京パラリンピックでは、平泳ぎでも背泳ぎでも上位を狙っていきたい」と1年後の抱負を語った。

 山口の金メダルに対して、「彼が国歌を流してくれたのはチームにとって大きい。自分もこの勢いに乗っていきたい」と木村敬一が語れば、辻内彩野も「やっぱりチームメイトが世界新で金メダル取ってくれたのは嬉しかったので、自分も頑張らないとと思った」と意欲を示した。

 18歳の若き新鋭が手にした今大会初の金メダルが、日本選手団に勢いをもたらすことになるか。明日からのレースに大きな期待が寄せられる。大会は、15日まで。

(文・斎藤寿子

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