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競技レポート

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車いすT52クラス日本勢、表彰台独占!佐藤友は二冠達成!

1500メートルで優勝した佐藤友祈(撮影:越智貴雄)

 アラブ首長国連邦のドバイで開催されたパラ陸上の世界選手権。大会最終日となった15日(日本時間16日未明)、日本選手団のラストを飾ったのは男子1500m決勝(T52クラス)に臨んだ日本人トリオ。佐藤友祈(WORLD-AC)、上与那原寛和(SMBC日興証券)、伊藤智也(バイエル薬品)が表彰台を独占し、9日間にわたって繰り広げられた“東京パラリンピックの出場枠争奪戦”が幕を閉じた。

 3人はいずれもすでにほかの種目で4位以内に入賞し、来年の東京パラリンピックの出場が内定していた。だからこそ、この種目で世界記録保持者の佐藤は優勝を狙い、上与那原と伊藤は佐藤に続くかたちでゴールし、“日本勢表彰台独占”を狙っていた。

 ライトアップされたトラックにスタンドからの視線が集まる中、スタートの号砲が鳴った。まず最初に飛び出したのは、伊藤と上与那原の2人。彼らに続いて佐藤が3番手で最初のバックストレートの100mを走った。

 しかし、コーナーを回り切り、ホームストレートに入ってきた時には先頭は佐藤へと譲られた。そこから佐藤は度肝を抜くようなスピードで後続のレーサーたちをあっという間に引き離していった。もう、そこは世界王者の独壇場だった。

 最後まで佐藤の“一人旅”は続き、最終的には100mほどの差をつけ、3分39秒99での大会新記録でゴール。400mに続く二冠に輝いた。

2位に入った上与那原(左)と3位の伊藤(撮影:越智貴雄)

 その佐藤に続いてゴールしたのが、上与那原と伊藤のベテラン勢だ。4カ月前からお互いの地元を行き来しながら、この日のレースに備えてトレーニングしてきたという2人は、佐藤が飛び出すことは想定しており、自分たちのプラン通りに2、3位をキープし続けた。そして、最後のホームストレートでデッドヒートを繰り広げた結果、軍配が上がったのは上与那原だった。

 3分56秒21と自己ベストからは5秒以上遅いタイムには「まぁ、こんなものでしょう」と語った上与那原だったが、伊藤とのスプリント勝負に勝ったことについては「最後はとてもいいレースができた」と笑顔を見せた。

 一方、伊藤は3分56秒52で自己ベストを更新。「最後は抜かれるはずではなかったんやけど(笑)」と冗談を飛ばして報道陣を笑わせながらも「でも、一番は日本勢表彰台独占が至上課題だと思っていたので、良い結果が出て本当に良かった」と喜びを口にした。

 優勝した佐藤は、最大のライバルであるレイモンド・マーティン(アメリカ)不在の中、早い段階で独走状態になることを想定していた。彼が意識していたのは単なる“勝利”ではなく、後続を大きく引き離しての“完勝”だったという。

「400m決勝では、思いのほか、伊藤さんに最後のホームストレートまで先行されたので、この1500mではしっかりと差をつけて勝ち切りたいと考えていた」

 そして、東京パラリンピックへの思いをこう語った。
「(ライバルの)マーティン選手もこの世界選手権ではなく、来年の東京パラで僕に勝ちたいと思っているでしょうし、僕自身もパラリンピックの舞台でマーティン選手に勝ちたいと思っている。東京ではいい勝負をしたいと思っています」

 リオパラリンピックでは400m、1500mでマーティンが金メダルに輝き、佐藤は銀メダルに終わった。その悔しさを晴らす“本番”は、もうすぐそこだ。残り9カ月、佐藤はさらに磨きをかけ、世界の頂へと向かうつもりだ。

(文・斎藤寿子)

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